M&Aの仲介手数料は、原則として「会計上は費用(経費)」として処理しますが、「税務上は資産(取得原価)」として計上し直すケースが大半です。
「多額の手数料を今期の経費にして節税したい」と考えていても、実際には税務上のルールにより損金算入(経費化)が認められないことが多いため、注意が必要です。特に「株式譲渡」における手数料は、株式を売却するまで費用化できないのが通例です。
この「会計と税務のズレ」を正しく理解し、申告調整(加算)を行わないと、税務調査での指摘や追徴課税のリスクに直結します。
本記事では、買い手・売り手それぞれの立場から、M&A仲介手数料の正しい会計処理と税務上の取り扱いを完全解説します。
「いつ経費になるのか?」「消費税は控除できるのか?」といった実務的な疑問や、具体的な仕訳例も網羅しましたので、ぜひ決算・申告実務にお役立てください。
M&A手数料の会計・税務における「基本ルール」

M&Aにおける手数料の会計処理と税務上の取り扱いは、「会計(決算書)」と「税務(法人税申告)」でルールが食い違うことが最大の特徴です。ここを正しく理解しておくことが、後のトラブルを防ぐ第一歩となります。
基本的な判断基準(原則)として、以下の対立構造を押さえておきましょう。
- 会計上のルール: サービスの対価として、原則「費用(経費)」で処理する。
- 税務上のルール: 資産を買うためのコストとして、原則「取得価額(資産)」に含める。
- 実務上の対応: 両者のズレを調整するため、申告時に「申告調整(加算)」を行う。
- これらのルールは、企業会計基準(ASBJ)や法人税法に基づいて定められています。
特に買い手企業においては、会計上は経費に見えても、税金を計算する上では経費として認められないケースが大半であるため、注意が必要です。
なお、本記事では会計・税務処理について解説していますが、「そもそも手数料はいくらが妥当なのか?」「一般的な計算式(レーマン方式)はどうなっているのか?」について詳しく知りたい方は、以下の記事もあわせてご確認ください。
【合わせて読みたい】
会計上の取扱い:原則は「発生時費用処理」
現在の日本の会計基準(企業結合会計基準 ※2015年改正)において、M&Aの仲介手数料やDD費用は、原則として「発生した事業年度の費用」として処理します。
これは、「M&Aの手数料は、投資そのものの対価(資産価値)ではなく、サービスの提供を受けた対価(費用)である」という考え方に基づいています。 具体的には、以下のような科目が費用処理の対象となります。
- M&Aアドバイザリーへの相談料・仲介手数料
- デューデリジェンス(財務・法務・税務DD)費用
- 企業価値評価(バリュエーション)費用
- 弁護士・税理士等の専門家報酬
ただし、すべての仲介手数料が費用処理されるわけではない点に注意が必要です。
買い手の場合、株式取得に直接関連する手数料は取得原価に含める必要があるなど、例外的な処理が求められるケースもあります。
かつては会計上も「取得原価(資産)」に含める処理がありましたが、現在は国際的な会計基準に合わせて「費用処理」が原則となりました。これにより、「会計(費用)」と「税務(資産)」のズレがより鮮明になっています。
詳細な会計基準については、企業会計基準委員会(ASBJ)の公表資料をご確認ください。
税務上の取扱い:原則は「資産(取得価額)」または「譲渡費用」
会計基準とは対照的に、法人税法では、M&A手数料を「資産の一部」とみなし、立場によって以下のように明確に区分されています。
| 立場 | 税務上の区分 | 損金算入(経費化)の時期 |
|---|---|---|
| 買い手 | 取得価額(資産) | 株式を売却、または会社を清算した時 |
| 売り手 | 譲渡費用 | 譲渡(売却)を実行した事業年度 |
これらの規定は国税庁の法人税基本通達5-1-1に基づいており、税務調査で最もチェックされやすいポイントの一つです。
税務調査での指摘を防ぐためにも、正確な処理が求められます。
なぜズレる?「申告調整(別表加算)」の実務
上記の通り、「会計上は費用」だが「税務上は資産」というズレが生じた場合、どうすれば良いのでしょうか?
ここで必要になるのが、法人税申告書における「申告調整(別表四での加算)」です。
<申告調整のイメージ>
- 決算書(P/L): 手数料を「支払手数料(費用)」として計上し、利益を減らす。
- 法人税申告書(別表四): 「会計上は費用にしたが、税務上は認められない」ため、その金額を**「加算(利益に足し戻す)」**処理を行う。
- 結果: 会計上の利益より、税務上の課税所得の方が増え、その分だけ納税額が発生する。
例えば、買い手が仲介手数料1,000万円を支払った場合、決算書の利益は1,000万円減りますが、税金計算上はその1,000万円を経費と認めず、資産(株式)として計上し直します。
M&A仲介手数料において申告調整が必要となる主な理由は以下の通りです。
- 会計上は費用処理したが、税務上は取得価額に算入すべき場合
- 費用計上の時期が会計と税務で異なる場合
- 損金算入限度額が設けられている項目がある場合
この調整を忘れて「決算書で経費にしたからOK」と放置すると、申告漏れとなり、過少申告加算税や延滞税が課される可能性があります。M&Aを行った年度の申告は、必ず税理士と綿密な確認を行ってください。
【買い手編】1. 株式譲渡(株式取得)の会計・税務処理

買い手として他社の株式を取得する際、仲介手数料の処理は「会計」と「税務」でルールが異なるため、最も注意が必要なポイントです。
原則として、税務上は「取得価額(資産)」に含める必要がありますが、会計上は「費用」として処理することが求められるケース(企業会計基準適用時)があります。このズレを解消するために、決算後の税務申告で「申告調整」を行うのが実務の基本フローとなります。
取得原価に含めるべき費用の範囲(付随費用)
税金計算のルール(法人税法)において、株式の購入代金だけでなく、購入のために直接要した費用も「付随費用」として取得価額に含める必要があります。
これらは「株式という資産を買うためのコスト」とみなされるため、原則として即時の経費(損金)処理は認められません。
取得原価に含めるべき主な付随費用は、以下のとおりです。
- M&A仲介会社への手数料(着手金・成功報酬など)
- デューデリジェンス(DD)費用(財務・法務・税務などの調査費用)
- 弁護士・公認会計士・税理士への専門家報酬
- 株式名義書換料
- 証券会社への委託手数料
一方で、M&Aの検討初期段階で発生した調査費用(意思決定前の費用)や、買収後の統合プロセス(PMI)にかかる費用は、株式取得に直接紐付かないため、発生時の経費として処理できる場合があります。
この線引きについては、国税庁の法人税基本通達(5-1-1等)に基づき、慎重に判断する必要があります。
いつ損金(経費)になるのか?
資産計上された仲介手数料などの付随費用が、税務上の経費(損金)として認められるのは、以下のタイミングです。
- その株式を売却した時(譲渡原価として計上)
- その子会社が解散・清算した時
- 著しい価値下落により、税務上の評価損が認められた時(極めて限定的)
つまり、株式を長期保有し続ける限り、支払った手数料は税務上の経費にならず、節税効果は発生しないという点に十分注意が必要です。
損金算入のタイミングを整理すると、以下の通りです。
| 時点 | 会計処理 | 損金算入 |
|---|---|---|
| 株式取得時 | 有価証券(資産)計上 | 不可 |
| 保有期間中 | 変動なし | 不可 |
| 株式売却時 | 譲渡原価として費用化 | 可能 |
経営戦略上、出口戦略を見据えた資金計画が重要となります。
【重要】連結決算と個別決算の違い
M&Aに伴う仲介手数料の処理は、連結決算と個別決算で大きく異なる点に注意が必要です。
適用する会計基準や会社の規模によって実務対応が分かれるため、まずは両者の違いを整理します。
| 項目 | 個別決算 | 連結決算 |
|---|---|---|
| 仲介手数料の処理 | 取得原価に算入 | 発生時費用処理 |
| 損益への影響時期 | 株式売却時 | 取得時(即時) |
| 適用基準 | 金融商品会計基準 | 企業結合会計基準 |
以下で、それぞれの詳細な処理ルールについて解説します。
個別財務諸表の場合
企業が自社単体の財務状況を示す決算書類を作成する際、M&A関連の仲介手数料は特定のルールに従って処理されます。
多くの中小企業では、税務申告の手間を省くため、会計上の処理も税法に合わせて「取得原価(資産)」として計上するケースが一般的です。
具体的な処理のポイントは以下の通りです。
- 仲介手数料は「投資有価証券」または「関係会社株式」の勘定科目に加算して計上する。
- 損金算入のタイミングは株式売却時まで繰り延べられる。
- デューデリジェンス費用なども同様に取得価額へ算入する。
この処理により、株式を保有している期間中は費用として認識されず、貸借対照表上の資産として計上され続けます。詳細は国税庁法人税基本通達5-1-1をご参照ください。
連結財務諸表(上場企業・会計監査適用企業)の場合
上場企業や会計監査を受ける企業では、企業結合会計基準に基づき、仲介手数料などの付随費用は「発生した事業年度の費用」として処理することが求められます。 この処理方法は、企業結合に関する会計基準第26項に明確に規定されており、具体的には、外部のアドバイザー等に支払った特定の報酬・手数料は、発生した事業年度の費用として処理することが求められています。
費用処理の対象となる主な項目は以下の通りです。
- M&A仲介会社への成功報酬・着手金
- ファイナンシャルアドバイザー(FA)報酬
- 弁護士・公認会計士へのデューデリジェンス費用
- 株式価値算定費用
この会計処理により、取得年度の連結損益計算書において費用が計上されるため、当期純利益に直接影響を与えます。経営者の皆様は、M&A実行時期と決算期の関係を考慮した利益計画の策定が重要となります。
具体的な仕訳例と勘定科目
ここでは、会計基準に則り「費用処理」を行った上で、税務上の「申告調整」を行うパターンの実務処理を解説します。 このプロセスは実務上最も間違いやすい部分ですので、具体的な数字を用いて、決算書作成から法人税申告までの流れをステップごとに解説します。
【シミュレーションの前提】
- 取引内容: A社の全株式を買い取り、子会社化した。
- 株式購入代金: 1億円
- 仲介手数料: 500万円(税抜)
- 消費税: 50万円(手数料10%相当)
会計上の仕訳
まず、会社の会計帳簿における処理です。 会計基準に従い、仲介手数料は株式の取得原価には含めず、当期の「費用」として計上します。
| 借方科目 | 金額 | 貸方科目 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 関係会社株式 | 100,000,000 | 普通預金 | 100,000,000 | 株式購入代金 |
| 支払手数料 | 5,000,000 | 普通預金 | 5,500,000 | M&A仲介手数料 |
| 仮払消費税 | 500,000 | 消費税(10%) |
この仕訳処理における重要なポイントは以下の通りです。
- 仲介手数料は「支払手数料」などの費用科目で計上します。
- 株式の勘定科目には手数料を含めません。
- 消費税は「仮払消費税」として処理します。
- 課税事業者は決算時に仕入税額控除が可能です。
税務上の申告調整
決算が締まり、法人税の申告書を作成する段階で、会計と税務のズレを修正します。 会計上は「経費」として処理しましたが、税務上はこの500万円を「株式という資産の一部」とみなすため、経費として認められません。
そこで、法人税申告書の「別表四(所得の金額の計算に関する明細書)」にて、減らしてしまった利益を足し戻す調整を行います。
| 調整区分 | 項目名(例) | 金額 | 留保・社外流出 |
|---|---|---|---|
| 加算 | 有価証券取得付随費用 | 5,000,000 | 留保 |
この「加算(留保)」という処理を行うことで、会計上の利益に500万円がプラスされ、正しい課税所得が算出されます。つまり、この500万円に対しては当期の法人税が課税されることになります。
なお、「留保」とは、この500万円が消えてなくなるわけではなく、税務上の「資産(簿価)」として残り続けることを意味します。この金額は、将来株式を売却(または除却)した年度の申告において「減算(損金算入)」処理を行うことで、最終的に経費化(利益から控除)されます。
最後に、申告調整が必要な場合の対応パターンをまとめると以下のようになります。
| 状況 | 調整内容 | 別表四の記載 |
|---|---|---|
| 費用計上 → 取得価額算入 | 加算調整 | 損金不算入(留保) |
| 取得価額 → 費用処理 | 減算調整 | 損金算入 |
この申告調整を怠ると、税務調査で「経費の過大計上」として指摘を受け、過少申告加算税や延滞税が課される可能性があるため、慎重な対応が求められます。
【買い手編】2. 事業譲渡の会計・税務処理

会社そのものではなく、特定の事業部門や資産・負債を買い取る「事業譲渡」の場合、株式取得とは異なる会計処理が求められます。
事業譲渡では、取得した資産・負債を個別に時価評価して計上する必要があり、仲介手数料の扱いも、資産への按分や一時の損金処理など、複数の判断基準が存在します。
具体的な処理の流れは以下のとおりです。
- 取得資産と引受負債をそれぞれ時価で評価する。
- 支払対価との差額を「のれん」または「負ののれん」として計上する。
- 仲介手数料・デューデリジェンス費用を適切に処理(取得原価算入または損金処理)する。
- のれんは税務上、5年間で均等償却
特に、事業譲渡は個別資産の取得となるため、消費税の課税対象となる点にも注意が必要です。
事業譲渡を行った場合の詳細な規定や具体的な税務処理については、顧問の税理士にご相談下さい。
資産ごとの按分と費用の考え方
事業譲渡において複数の資産を一括取得した場合、仲介手数料などの付随費用を各資産にどのように配分するかが重要な論点となります。
按分の基本的な考え方は、取得した各資産の時価比率に基づいて費用を配分する方法です。
具体的な按分例を以下の表で確認しましょう。
【仲介手数料500万円を按分する場合の例】
| 取得資産 | 時価 | 時価比率 | 仲介手数料按分額 |
|---|---|---|---|
| 土地 | 3,000万円 | 30% | 150万円 |
| 建物 | 2,000万円 | 20% | 100万円 |
| 機械設備 | 1,500万円 | 15% | 75万円 |
| のれん | 3,500万円 | 35% | 175万円 |
| 合計 | 1億円 | 100% | 500万円 |
按分方法の選択にあたっては、以下の点に留意する必要があります。
- 減価償却資産(建物など)に配分された費用は、その資産の耐用年数で償却されます。
- 土地に配分された費用は、売却するまで償却できません(費用化できません)。
- のれんに配分された費用は、税務上5年で均等償却されます。
費用の按分基準については合理的な根拠を文書化しておくことで、税務調査時のリスク軽減につながります。
一時の損金(経費)として処理できるケース
上記の「資産ごとに按分」する方法は理論上の原則ですが、実務上、事業譲渡における一般的な仲介手数料は、「事業規模の拡大や円滑な引継ぎのために要した費用」と解釈し、支出した事業年度の「一時の損金(全額経費)」として処理することが認められるケースが多いです。
これは、仲介手数料が土地や建物などの「特定の資産の価値を高めるものではない」と考えられるためです。
一時の損金として処理できる主なケース(および損金処理の根拠)は以下のとおりです。
- M&A交渉が破談となった場合:取引不成立時の着手金や中間金は、資産取得がないため全額損金となります。
- 初期調査費用:複数の候補先を検討するための費用は、特定の資産取得に直接紐付かないため損金性が強いです。
- 一般的な成功報酬(成約時):特定の資産(土地など)の取得に直接要した費用でない限り、事業遂行上の経費として損金算入が認められる可能性があります。
これにより、M&Aを実施した初年度に多額の経費を計上でき、法人税を抑える効果が期待できます。 ただし、金額が多額である場合など、税務署から「資産性がある(のれんの一部として5年償却すべき)」と指摘されるリスクもあるため、一括損金処理を行う際は必ず顧問税理士の判断を仰いでください。
詳細な取り扱いについては、国税庁の法人税基本通達もあわせてご確認ください。
のれん(資産調整勘定)の償却による節税効果
もし、仲介手数料を一時の損金とせず、買収代金と純資産の差額である「のれん」に含めた場合でも、事業譲渡には節税メリットがあります。
- 会計上ののれん:20年以内の期間で償却(費用化)。
- 税務上ののれん(資産調整勘定):5年間で均等償却(月割計算)し、損金算入が可能。
株式取得の場合、のれん代は「株式の取得価額」に含まれてしまい償却(経費化)できませんが、事業譲渡であれば、のれん代(およびそれに含めた手数料)を5年間で確実に経費化し、毎期の税金を減らすことができます。
のれんの償却による節税効果の比較は次の通りです。
- 株式譲渡の手数料:売却するまで経費にならない(節税効果なし)。
- 事業譲渡の手数料:「一括経費」または「5年償却」が可能(早期の節税効果あり)。
のれん償却による具体的な節税額シミュレーション(税率30%)は、以下の表でご確認ください。
| のれん金額 | 年間償却額 | 年間節税額(税率30%の場合) |
|---|---|---|
| 5,000万円 | 1,000万円 | 300万円 |
| 1億円 | 2,000万円 | 600万円 |
| 3億円 | 6,000万円 | 1,800万円 |
この節税効果は株式取得にはない事業譲渡特有のメリットです。
M&Aのスキーム選択時には、この点を考慮した総合的な判断が重要となります。
詳しい税務処理や詳細な規定等については、顧問の税理士にご相談下さい。
消費税の課税関係(事業譲渡は課税取引)
株式譲渡が非課税取引として扱われるのに対し、事業譲渡は資産の売買として課税取引に該当します。課税対象となる資産には、建物、棚卸資産、設備、のれんなどが含まれます。
これらの対価に対して消費税が発生するため、取引金額が大きくなるほど税負担も増加します。
また、M&A仲介会社に支払う仲介手数料についても、当然ながら消費税の課税対象です。
買い手企業にとって注意すべき点は、支払う消費税額が多額になる可能性があることです。例えば、事業譲渡対価が1億円の場合、消費税だけで1,000万円の支払いが発生します。
この負担を軽減するために、以下の対策を事前に検討しておくことが重要です。
- 仕入税額控除による還付申告のタイミング調整
- 消費税還付までの資金繰り計画の策定
- 課税事業者届出の確認と必要に応じた届出手続き
特に、消費税の還付を受けるまでには一定期間を要するため、その間の運転資金を確保しておく必要があります。
資金計画を綿密に立て、キャッシュフローに支障が出ないよう準備を進めてください。
【売り手編】1. 売り手が「法人」の場合の会計・税務処理

買い手側の処理に続き、ここからは「売り手」側の会計・税務処理について解説します。
法人が事業や株式を売却する際に支払うM&A仲介手数料は、原則として売却に直接関連する費用として処理されますが、売却対象が「株式」か「事業」かによって、会計上の表示箇所や税務上の損金算入の考え方が異なります。
両者の違いを整理すると以下の通りです。
| 項目 | 株式譲渡 | 事業譲渡 |
|---|---|---|
| 会計処理 | 譲渡費用として売却益から控除 | 販管費(支払手数料)として処理 |
| 税務処理 | 譲渡原価(売却益の圧縮) | 損金算入(経費) |
| 消費税 | 課税仕入れ(控除可能) | 課税仕入れ(控除可能) |
売り手法人にとって、この処理方法の違いは最終的な税負担やキャッシュフローに直結します。
それぞれのスキームについて、以下で詳しく解説していきます。
詳細な取り扱いについては、国税庁の法人税に関するページも参考にしてください。
会計処理:売却損益への反映(株式譲渡)
株式を譲渡する際に発生する仲介手数料は、会計上、売却損益の計算に直接影響を与える重要な要素となります。
具体的には、仲介手数料は株式の譲渡対価から控除される「譲渡費用」として位置づけられます。
このため、仕訳においては売却代金から仲介手数料を差し引いた金額が、実質的な手取り額として認識されることになります。
仕訳例(株式を1億円で譲渡、仲介手数料500万円の場合)
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 9,500万円 | 投資有価証券 | 8,000万円 |
| 支払手数料 | 500万円 | 投資有価証券売却益 | 2,000万円 |
また、別の処理方法として、売却益から直接控除する形で仕訳を行う方法もあります。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 現金預金 | 9,500万円 | 投資有価証券 | 8,000万円 |
| 投資有価証券売却益 | 1,500万円 |
どちらの方法を採用しても、最終的な損益への影響は同じです。
ただし、財務諸表上の表示や分析のしやすさを考慮して、自社の経理方針に沿った処理方法を選択することが大切です。
会計処理:販管費としての処理(事業譲渡)
事業譲渡を行う法人が支払うM&A仲介手数料は、損益計算書上の「販売費及び一般管理費」として計上するのが原則です。
この処理方法が採用される理由は、事業譲渡における仲介手数料が事業活動に関連する費用と認められるためです。
具体的な仕訳例は、以下のとおりです。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 500万円 | 現金預金 | 550万円 |
| 仮払消費税 | 50万円 |
勘定科目としては「支払手数料」や「業務委託費」を使用することが一般的です。
販管費として処理することで、その事業年度の損金に算入され、法人税の課税所得を減少させる効果があります。
ただし、金額が多額になる場合は、注記事項として別途開示が求められることもあります。
経理処理を行う際は、仲介契約書や請求書などの証憑書類を適切に保管し、税務調査に備えておくことが大切です。
事業譲渡における消費税の納税義務
事業譲渡を行う売り手法人は、譲渡対価に対して消費税の納税義務が発生する点に注意が必要です。
株式譲渡とは異なり、事業譲渡では譲渡する資産ごとに消費税の課税・非課税が判定されます。
<消費税が課税される主な資産>
- 建物・構築物などの有形固定資産
- 機械装置・車両運搬具・器具備品
- 棚卸資産(商品・製品・原材料)
- 営業権(のれん)
- 特許権・商標権などの無形固定資産
<消費税が非課税となる資産>
- 土地
- 有価証券
- 売掛金・貸付金などの金銭債権
事業譲渡の対価が1億円であっても、その内訳によって消費税の課税標準額は大きく変動します。
例えば、土地の割合が大きければ消費税負担は軽減されますが、のれんや棚卸資産の割合が高ければ相応の消費税を納付する必要があります。
また、仲介手数料として支払った消費税は「課税仕入れ」として控除できるため、納税額の計算時には忘れずに算入してください。
譲渡契約書を作成する際には、資産ごとの対価配分を明確にし、税務リスクを回避することが重要です。
【売り手編】2. 売り手が「個人(オーナー経営者)」の場合の税務処理

続いて、オーナー経営者が「個人」として保有株式を売却する場合の税務処理について解説します。売り手が個人の場合、適用される法律は法人税法ではなく所得税法となり、税率や計算ルールが大きく異なります。
詳細な要件については、国税庁「譲渡費用となるもの」をご参照ください。
譲渡所得税(分離課税)の計算と「譲渡費用」
オーナー経営者が自社株式を売却した場合、その利益は「譲渡所得」として分離課税の対象となります。
譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
- 譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)
- 税額 = 譲渡所得 × 20.315%(所得税15.315% + 住民税5%)
ここで重要なのが、「譲渡費用」の範囲です。
M&A仲介会社へ支払った手数料は、株式売却のために直接要した費用として譲渡費用に算入できます。譲渡費用を適切に計上することで課税対象となる譲渡所得が減少し、結果として税負担を軽減できます。
譲渡費用として認められる主な項目は、次の通りです。
- M&A仲介手数料・アドバイザリー報酬(着手金・成功報酬など)
- 株式売却に係る弁護士・税理士への報酬
- 株式譲渡契約書の作成費用
- デューデリジェンス対応費用
また、譲渡費用として認められない項目は、次の通りです。
- 日常的な顧問税理士への報酬
- 株式売却の意思決定前に発生した調査費用
- 売却交渉が不成立となった案件の費用
譲渡費用として認められるためには「資産の譲渡のために直接要した費用」であることが条件となります。判断に迷う場合は、税理士への相談をお勧めいたします。
なお、確定申告は株式を譲渡した翌年の2月16日から3月15日までに行う必要があります。
消費税の取扱い(個人の場合)
個人オーナーが株式を売却する際に支払う仲介手数料には、消費税が課税されます。
ただし、個人が受け取る株式譲渡対価については、消費税の課税対象外となる点を理解しておく必要があります。
仲介手数料の消費税処理のポイントは、以下の通りです。
- M&A仲介会社へ支払う手数料には10%の消費税が含まれている。
- 個人は原則として消費税の納税義務者ではないため、支払った消費税の還付は受けられない。
- 仲介手数料の税込総額がそのまま譲渡費用として計上可能。
法人であれば仕入税額控除により消費税分を取り戻せるケースもありますが、個人の場合はその恩恵を受けることができません。そのため、仲介手数料を比較検討する際は、税込金額で実質的なコストを把握することが重要です。
例えば、仲介手数料が1,000万円の場合、消費税100万円を加えた1,100万円が実際の支出となり、この全額を譲渡費用として確定申告時に控除することになります。
消費税の詳細については、国税庁「非課税となる取引」をご確認ください。
【最大のリスク】会社が手数料を負担した場合の「認定賞与」
個人オーナーが株式を売却する際、本来であれば売主自身が仲介手数料を負担すべきところを会社が支払ってしまうケースがあります。
しかし、この処理は税務上、会社から個人への経済的利益の供与とみなされ、「認定賞与(役員賞与)」として課税される重大なリスクが発生します。
認定賞与が適用された場合、以下のような多大なペナルティが生じます。
- 個人側:給与所得として最大55%(所得税+住民税)の累進課税が適用される。
- 会社側:損金不算入となり、法人税の負担が増加する。
- 源泉徴収:徴収漏れとして、不納付加算税・延滞税が課される可能性がある。
例えば、仲介手数料が3,000万円の場合、認定賞与として扱われると個人の税負担が数百万円〜1,000万円単位で増加することも珍しくありません。
このリスクを回避するためには、契約書において手数料負担者を明確に定め、実際の資金の流れも契約内容と一致させることが不可欠です。
では、なぜこのような厳しい課税処分が行われるのでしょうか?次の項目でその理由を詳しく解説します。
なぜ会社負担がNGなのか?
オーナー経営者が個人として保有する株式を売却する際、本来は株主個人が負担すべき仲介手数料を会社が支払ってしまうケースがあります。
しかし、この処理は税務上非常に大きな問題を引き起こします。
会社が負担した仲介手数料は、税務上「役員への経済的利益の供与」とみなされ、役員賞与として認定される可能性が極めて高いのです。
その理由は、主に以下の通りです。
- 利益の帰属:株式売却の利益を受けるのは「株主個人」であり、会社ではない。
- 事業関連性の欠如:会社にとって株主が変わることは、事業上の必要経費とは認められない。
- 債務の肩代わり:実質的に、役員個人の負担すべき債務を会社が肩代わりしている状態となる。
認定賞与となった場合、会社側では損金不算入となり法人税の負担が増加します。 一方、役員個人側でも給与所得として最大55%の所得税・住民税が課される「二重課税」の状態に陥ります。
詳細については国税庁の法人税基本通達をご確認ください。
認定賞与とされた場合のダブルパンチ
会社が本来オーナー個人が負担すべき仲介手数料を肩代わりした場合、法人・個人の両方に課税されるという二重の負担が生じます。
この「ダブルパンチ」の具体的な内容は以下のとおりです。
| 課税対象 | 影響内容 | 税負担の目安 |
|---|---|---|
| 個人(オーナー) | 給与所得として累進課税 | 最大55% |
| 法人(会社) | 損金不算入で法人税増加 | 約30% |
仮に、仲介手数料2,000万円が認定賞与とされた場合、個人で最大1,100万円、法人で約600万円、合計1,700万円もの追加税負担が発生する可能性があります。 さらに、源泉徴収義務を怠った場合には不納付加算税(10%)や延滞税も加算されます。
このような事態を防ぐには、M&A契約締結前に税理士と協議し、手数料負担の取り決めを書面で明確化することが重要です。
会社が立て替えた場合の精算処理と仕訳
実務上、資金繰りの関係から会社が一時的に仲介手数料を立て替えるケースは少なくありません。
ただし、認定賞与のリスクを回避するためには、適切な精算処理を行うことが不可欠です。
立替金として処理する際の具体的な仕訳例は以下のとおりです。
| タイミング | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 会社が立替払い時 | 立替金 500万円 | 普通預金 500万円 |
| オーナーから精算時 | 普通預金 500万円 | 立替金 500万円 |
精算処理を適正に行うためのポイントは以下の3点です。
- 立替金勘定を使用し、会社の費用として計上しないこと
- 株式譲渡完了後、速やかに精算を完了させること
- 精算の事実を証明する領収書や振込記録を保管すること
精算が長期間放置されると、税務調査において実質的な給与と認定される恐れがあります。
原則として、譲渡代金受領後1か月以内の精算が望ましいとされています。
勘定科目・支払タイミング別の実務ポイント

M&A仲介手数料を適切に処理するためには、使用する勘定科目と支払いのタイミングを正確に把握することが不可欠です。
実務において、手数料の支払いは一般的に以下のタイミングで発生します。
- 着手金:契約締結時
- 中間報酬:基本合意締結時
- 成功報酬:クロージング時
- 月額報酬(リテイナーフィー):毎月
これらの支払いタイミングによって、いつ費用(または資産)として計上すべきかが変わってきます。
特に買い手の場合、最終的に「株式取得原価」に含まれる費用は、支払時には「前渡金」などで仮置きする必要があるため注意が必要です。
詳細な会計基準については、企業会計基準委員会(ASBJ)の公表資料をご確認ください。
正確な勘定科目の選択は、財務諸表の信頼性を高め、税務リスクを軽減するために重要です。
なお、手数料が発生する「基本合意」や「クロージング」が、M&A全体の流れの中でどの段階にあたるのかを把握しておくと、会計処理の準備もスムーズになります。 M&Aの一般的な進行フローについては、以下のガイドをご参照ください。
▶︎会社売却・事業譲渡の流れ
デューデリジェンス(DD)費用は経費になるか?
買収候補先の財務状況や法務リスクを精査するために発生する調査費用(DD費用)は、その取り扱いに注意が必要です。
結論として、M&Aが「成立したか否か」および「いつ実施したか」で会計処理が異なります。
- M&A成立時: 原則として「取得原価(資産)」に含める。
- M&A不成立時: 「当期の損金(経費)」として処理可能。
国税庁の見解では、株式等の取得に要した費用は原則として取得価額に算入されます。
ただし、調査段階で中止となった場合は、事業関連費用として損金算入が認められています。
具体的な費用の内訳は以下の通りです。
| 費用項目 | 成立時 | 不成立時 |
|---|---|---|
| 財務DD費用 | 取得原価(資産) | 損金(経費) |
| 法務DD費用 | 取得原価(資産) | 損金(経費) |
| 税務DD費用 | 取得原価(資産) | 損金(経費) |
なお、M&A成立時であっても、「購入の意思決定前」に行われた予備的な調査費用については、経費計上が認められるケースがあります。詳細については国税庁の法人税基本通達をご参照ください。
また、会計処理上も重要な論点となる「デューデリジェンス(買収監査)」ですが、具体的にどのような調査を行い、どれくらいの費用相場がかかるのかについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【合わせて読みたい】
着手金・中間金・リテイナーフィーの計上時期
M&A仲介契約では、手数料の支払いが複数回に分けて発生するため、それぞれの計上時期を正しく理解しておく必要があります。特に「買い手」の場合、支払ったタイミングですぐに経費にできない点に注意が必要です。
各手数料の計上時期と処理方法は以下の通りです。
| 手数料の種類 | 支払時期 | 会計処理のポイント(買い手の場合) |
|---|---|---|
| 着手金 | 契約締結時 | 「前渡金」として資産計上し、クロージング時に取得価額へ振替 |
| 中間金 | 基本合意時 | 「前渡金」として資産計上し、クロージング時に取得価額へ振替 |
| リテイナーフィー | 毎月 | 役務提供の実態に応じ、期間費用または取得価額へ計上 |
着手金や中間金は、契約時に支払いますが、M&Aが成立するまでは「資産(株式)」になるか「経費(破談時の損失)」になるかが確定しません。 そのため、支払った時点では「前渡金」や「仮払金」として処理しておき、クロージング時に「投資有価証券」等へ振り替える処理が一般的です。
一方、売り手の場合は、役務提供が完了したとみなされる時点(契約内容による)で「支払手数料」として費用処理するケースが多くなります。 詳細な会計基準については国税庁の通達もご参照ください。
なお、M&A仲介会社によっては「着手金」や「中間金」が発生せず、成功報酬のみで依頼できる会社もあります。 Buyside Bankの手数料体系(完全成功報酬制など)については、以下のページで詳しくご案内しています。
▶︎BuysideBankの料金体系・手数料
成功報酬の計上タイミング
M&Aにおける成功報酬は、取引の成立をもって発生する報酬であり、その計上タイミングは会計処理において非常に重要な論点となります。
原則として、成功報酬は「クロージング日(株式譲渡実行日)」に計上します。これは、M&A取引が法的に完了し、報酬支払義務が確定した時点を指します。
具体的な計上タイミングの判断基準は以下のとおりです。
- 株式譲渡の場合:株式の引渡しおよび代金決済が完了した日
- 事業譲渡の場合:事業譲渡契約に基づく資産・負債の移転完了日
- 合併の場合:合併の効力発生日
計上時期を誤ると、期ずれ(本来計上すべき決算期とズレてしまうこと)による税務上の問題が生じる可能性があります。特に決算期末付近でクロージングが行われる取引では、慎重な判断が求められます。詳細な会計基準については、国税庁の公式見解もご参照ください。
案件がブレイク(中止)した場合の取扱い
M&A交渉が途中で頓挫(ブレイク)した場合、それまでに支払った仲介手数料の会計処理が問題となります。結論として、案件中止が確定した時点で、それまで資産計上(前渡金など)していた金額を全額「経費(損金)」に振り替えることが可能です。
案件中止時の取扱いは、以下のようになります。
- 着手金・月額報酬:支払時に資産計上していた場合は、中止確定時に一括して費用処理します。
- 中間報酬:返金されない場合は、同様に費用処理します。
- 税務上の扱い:M&A不成立による損失は、事業遂行上の費用として損金算入が認められます。
ただし、金額が多額の場合は税務調査で事業関連性を問われる可能性があるため、「取締役会議事録」や「交渉中止の通知書」など、交渉経緯と中止の事実を証明できる記録を残しておくことが重要です。
詳細な税務判断については、国税庁の通達や事例集をご参照ください。
M&A手数料にかかる消費税・源泉徴収・インボイス

M&A取引における仲介手数料には、消費税や源泉徴収など複数の税務処理が関係してきます。
経営者として正確な税務処理を行うためには、それぞれの取り扱いを理解しておくことが不可欠です。
M&A仲介手数料に関する主な税務ポイントは、以下の通りです。
- 消費税:M&A仲介サービスは課税取引に該当し、原則として10%の消費税が課されます。
- 源泉徴収:仲介会社が法人の場合は不要ですが、個人のアドバイザーへの報酬は源泉徴収が必要となる場合があります。
- インボイス制度:2023年10月から開始された適格請求書等保存方式により、仕入税額控除を受けるには適格請求書の保存が必要です。
特にインボイス制度については、仲介会社が適格請求書発行事業者かどうかを事前に確認することが重要です。
登録番号のない事業者への支払いは、仕入税額控除が段階的に制限されるため注意が必要です。
詳細については国税庁のインボイス制度特設サイトをご確認ください。
消費税の課税・非課税と仕入税額控除
M&A仲介手数料は、原則として消費税の課税対象となります。
仲介会社が提供するサービスは「役務の提供」に該当するため、標準税率10%の消費税が加算されます。
課税事業者である買い手企業は、支払った消費税について仕入税額控除の適用を受けることが可能です。ただし、控除を受けるためには以下の要件を満たす必要があります。
- 課税仕入れに該当すること。
- 適格請求書(インボイス)を保存していること。
- 帳簿に必要事項を記載していること。
一方、株式の売却に伴う手数料を売り手が支払う場合、「株式譲渡そのもの」は非課税取引ですが、「仲介手数料」は別個の課税取引として扱われます。
消費税の処理を誤ると、後日の税務調査で追徴課税を受けるリスクがあるため、慎重な対応が求められます。
詳細な取り扱いについては、国税庁のページをご確認ください。
海外の専門家に支払う場合の注意点
クロスボーダーM&A(海外企業との取引)において、海外のアドバイザーやコンサルタントに報酬を支払う際には、国内取引とは異なる税務処理が求められます。
海外専門家への支払いで確認すべき主なポイントは以下の通りです。
- 源泉徴収義務: 非居住者や外国法人への報酬支払いには、原則として20.42%の源泉徴収が必要です。
- 租税条約の適用: 日本と相手国との間に租税条約がある場合、税率の軽減や免除を受けられる可能性があります。
- 届出書類の提出: 租税条約の適用を受けるには、「租税条約に関する届出書」を事前に税務署へ提出する必要があります。
租税条約の有無や適用税率は国によって異なるため、支払い前に必ず確認しましょう。
適切な手続きを怠ると、後日追加納税を求められるリスクがあるため、国際税務に詳しい税理士への相談をお勧めします。
詳細は国税庁の源泉徴収に関するページをご参照ください。
個人の専門家(会計士・弁護士)への支払と源泉徴収
M&A取引では、仲介会社だけでなく公認会計士や弁護士といった個人の専門家に直接報酬を支払うケースも少なくありません。
このような個人への支払いについては、法人への支払いとは異なる税務上の取り扱いが求められます。
源泉徴収が必要となる報酬の種類
まずは、どのような報酬に対して源泉徴収が必要になるのか、具体的な税率とともに確認しましょう。
所得税法では、弁護士・公認会計士・税理士などの資格を持つ個人への報酬は源泉徴収の対象と定められています。
具体的には、支払金額から以下の税率で所得税を天引きし、翌月10日までに納付する義務があります。
| 支払金額 | 源泉徴収税率(復興特別所得税含む) |
|---|---|
| 100万円以下の部分 | 10.21% |
| 100万円超の部分 | 20.42% |
仕訳処理の具体例
源泉徴収税額を差し引いて支払う際の、具体的な仕訳処理は以下のようになります。 例えば、個人の弁護士にデューデリジェンス費用として**50万円(税抜)**を支払う場合、手取り額と預り金を分けて計上します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|---|
| 支払手数料 | 500,000円 | 普通預金 | 498,950円 |
| 仮払消費税 | 50,000円 | 預り金(源泉所得税) | 51,050円 |
※源泉所得税額:500,000円 × 10.21% = 51,050円
源泉徴収事務における注意点
源泉徴収を怠った場合、本来納付すべき税額に加えて不納付加算税や延滞税が課される可能性があります。
また、支払いを受けた個人には「支払調書」を作成し、翌年1月31日までに税務署へ提出する必要があります。なお、法人格を持つ仲介会社やコンサルティングファームへの支払いには源泉徴収は不要ですので、契約先が「法人」か「個人」かを事前に確認しておくことが大切です。
M&A手数料の税務に関するよくある質問
Q. 仲介手数料はいつ払うのが一般的ですか?
一般的には、契約締結時に「着手金」、基本合意時に「中間金」、そしてM&A成立時(クロージング)に「成功報酬」を支払います。ただし、近年は着手金無料の完全成功報酬型を採用する仲介会社も増えています。
Q. 買収が中止になった場合、手数料は経費になりますか?
原則として、なります。
M&Aが不成立(ブレイク)となった場合、それまでに支払った着手金やデューデリジェンス費用は、資産計上の根拠がなくなるため、全額をその期の「損金(経費)」として処理できます。
Q. 買い手ですが、手数料を分割払いにして経費化できますか?
原則としてできません。株式譲渡の場合、支払回数に関わらず「株式の取得価額(資産)」として計上する必要があるため、株式を売却するまで経費化はできません。
まとめ:M&Aの税務は「自己判断」が最大のリスク
M&A取引における税務処理は、その複雑さと金額の大きさから、専門家の関与なしに進めることは極めて危険です。
自己判断で会計処理を行った場合、以下のようなリスクが生じる可能性があります。
- 税務調査での指摘による追徴課税や加算税の発生
- 仲介手数料の資産計上・費用計上の判断ミスによる過大納税
- のれんの償却期間や減損処理の誤りによる財務諸表への悪影響
M&Aは一度きりの重要な経営判断であり、後から修正することが困難なケースも少なくありません。
特に事業承継を検討されている経営者の方は、早い段階から税理士や公認会計士などの専門家に相談されることを強くお勧めいたします。
M&Aの会計・税務は複雑ですが、Buyside Bankでは経験豊富なアドバイザーが、会計士・税理士と連携しながら、お客様の利益を最大化するサポートを行っています。 私たちが選ばれる理由やサポート体制については、以下をご覧ください。
また、BuysideBankでは、M&Aのマッチングだけでなく、会計・税務の専門家と連携したトータルサポートを行っております。
「自社の場合はどう処理すべきか」「税引後の手取りはいくらになるか」など、まずは無料相談にてお気軽にお問い合わせください。