ご回答したこと
「売れるかも」という期待が、本業の集中力を静かに奪うこともあります。
M&A会社に依頼して動き始めると、ある心理的な変化が起きるケースがあります。
「もしかしたら売れるかもしれない」という期待感が生まれ、そちらに意識が向き始めるんですね。
これは特別な人だけに起きることではありません。私がこれまで関わってきた経営者の方々を見ていると、売却活動中に本業への意欲が落ちてしまうケースは珍しくありませんでした。感覚値では、2-3割に近い経営者さんが多かれ少なかれこの影響を受けているように思います。
例えば、こんな状態に陥ったというお話を聞きました。
・「新規の営業活動について社員と話す機会が減り、動きが鈍くなった」
・「採用や設備投資の判断を『売却後でいいか』と先送りしてしまった」
・「現場よりも、M&A会社とのやり取りに時間を使うようになっていた」
その結果、業績が落ちてしまうと、売却価格にも悪影響が出ます。
「売りたいのに、売るための活動が売却価格を下げる」という、本末転倒な状況になりかねません。
依頼するかどうかを決める前に、こうした心理的リスクも頭に入れておくことは大切です。

お伝えしたこと
本業を磨くと、いつでも譲り渡せる状態になります。
実際にこんな事例があります。
コロナ禍で売上が激減したアパレル会社の経営者が、売却を検討してご相談にいらっしゃいました。
売却の主な動機は、事業の不安解消です。
しかし、株式価値を試算してみると、売却価格と今後必要になる金額感が全然合わない。
そこで今は売却することではなく、ご相談者は、事業の磨きこみをすることを決断されました。
商品ラインを絞り、コストを見直し、売れるものに選択と集中を行う。その結果、コロナ禍以前を上回る売上を取り戻されました。
後日「あの時売らなくてよかった」「いつでも売れる状態をつくることが必要だったんだ」と振返りされていました。
これは一つの事例ですが、「不安だから売りたい」という動機だけで動くと、売却後に新たな不安がやってくることも多いです。
手元に入ったお金が想定より少なく、次の収入源もない——そうなると、売却前より精神的につらい状況になることもあります。
売却をすこしでも検討するのであれば、ぜひ、会社をいつでも譲り渡せる状態に磨くことを意識されるとよいと思います。

ざっとまとめると
本業を磨くことが、いつでも譲り渡せる安心につながります
- M&A活動開始後に本業への意欲が落ちることがあります
- 「売れるかも」という期待感が静かに集中力を奪います
- 業績が落ちると売却価格にも悪影響が出る悪循環に注意が必要です
- 不安だけを動機に売却を急ぐと売却後により不安になることがあります
- いつでも売れる状態に会社を磨くことが、最善の準備になります



