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ホテル業界のM&A事例や動向

2015年頃から「ビジネスホテル難民」というキーワードがニュース等で飛び交うようになりました。訪日外国人観光客の増加がそのひとつの要因で、2020年に開催予定の東京オリンピック・パラリンピックや2025年に大阪で開催予定の万博(日本国際博覧会)、候補地が注目されているIR(統合型リゾート)など、観光やビジネス文脈でも今後も国内ホテル需要は高まっていくのではないかと予測されます。この記事では、ホテル業界の市場やM&A事例、M&A動向についてまとめています。

ホテル業界の市場動向

観光庁が発表している「宿泊旅行統計調査(平成30年 年間値)」によると日本の宿泊施設の客室稼働率は、全体で61.1%に伸びており、とくにビジネスホテル・シティホテルは70%を超えています。平成30年(2018年)の延べ宿泊者数は約5億920万人であり、そのうち日本人が約4億2040万人、外国人が約8860万人と、観光庁が2007年に調査をはじめてから過去最高を記録しました。2018年に訪日外国人旅行者数は3000万人を突破し、三大都市圏や地方部における外国人延べ宿泊者数比較はいずれも増加傾向にあります。
一方、ホテルの供給量について、旅館・下宿の施設数は前年に比べ減少しているのですが、ホテル・簡易宿所の施設数は増加している状態にあります。それも単に施設数が増えているだけではなく、高級カプセルホテルやラグジュアリーホテル、宿泊特化型ホテル、無人ホテル、アートホテル、民泊施設等、新たなジャンルのホテルが増えつつあります。
宿泊客の多層化・多国籍化が進んでいく中、細分化される宿泊ニーズやウォンツに対してどんなサービス価値を提供し、お客様からの評価(評判)を高めていくのか。ホテル経営は、マーケティング戦略と施設・設備、そしてサービスを三位一体となってコンセプチュアルに再構築していくスタイルが、今後より重要視されるようになると推察されます。

ホテル業界のM&A事例や動向

ホテル業界のM&A事例

訪日外国人旅行客をはじめとする宿泊需要の増大に伴い、ホテルの稼働率や宿泊料金は上昇傾向にあります。M&A市場では、大手企業や投資ファンドによる買収が盛んに行われており、海外案件の買収(in-out)も活発です。後継者不足等に問題を抱える地方のホテルをM&Aすることで、大手事業者が全国への出店を強化する動きも見られます。
また、投資ファンドや大手事業者のみならず、中堅・中小規模のホテル事業者やM&Aによって新規参入する異業種の企業も増えています。異業種参入のケースとしては、不動産事業者やブライダル・プロデュース事業者、アパレル事業者、カフェ事業者など多くあり、なかには個人が小規模のホステルやゲストハウスを買収しにいくケースも見られます。
参入プレイヤーが多くなり、競争が激化されることが予測される業界において、シナジー効果の創出が見込みやすいM&A投資は今後も増えていくと予測されます。

ホテル業界のM&A事例一例

ホテル業界のM&A事例一例 同業種M&A(Buyサイド:ホテル業界)
・株式会社ストライダーズが「ホテル日航倉敷」の保有・経営を行うロテルド倉敷株式会社の株式を取得し、子会社化
・東武鉄道株式会社が金谷ホテル株式会社の株式を取得
・株式会社大江戸温泉ホールディングスがアールビバン株式会社から「タラサ志摩ホテル&リゾート」を取得
・ウェルス・マネジメントがホテルサンルート京都の株式を取得
・株式会社ケン・コーポレーションは、関連会社の株式会社PHG函館マネジメントを通じて、ソラーレホテルズアンドリゾーツ株式会社より「ロワジールホテル函館」の運営権を取得

異業種M&A(Buyサイド:異業種)
・株式会社阪急阪神ホテルズが六甲山ホテルの事業を八光自動車工業株式会社に承継

ホテル業界のM&Aのポイント

Sellサイド(譲渡)企業のポイント

宿泊特化型ホテルは観光やビジネスの拠点としての機能を担うため、立地が重要視されています。宿泊客が自然と集まる良い立地に位置するホテルであれば、Buyサイド企業からの需要は一定見込めるはずです。また、一等地でなくても宿泊客が足を訪れるルートにある場所であったり、温泉やレジャー施設が併設しているなどホテルそのものが目的地になったりする場合であれば、そのターゲットに対する需要があるBuyサイド企業が興味を持つと推測されます。
営業権等の評価に関しては、稼働率や宿泊単価をまずは着目されます。そして、その売上を構成しているお客様リストや顧客満足度(評判)、さらにはその集客方法などについてBuyサイド企業からヒアリングされることが多いです。常日頃からマーケティング活動の履歴を蓄積することが重要になります。
営業権等は、営業利益やEBITDAをベースに、現在の市場環境や事業の仕組みがあれば同等の収益を安定して何年間維持できるかを評価し、算出されるケースが多いです。黒字の実績とともにその論拠を明示できる状態であるほうが、Buyサイドの需要を喚起しやすくなります。

Buyサイド(買収)企業のポイント

同業種M&Aの場合、エリア拡大やホテルのバリエーションを増やすことを目的とするパターンがよく見受けられます。譲渡対象となるホテルの成長課題や戦略の把握はもちろん、シナジー効果を戦略的に見立てて投資する事業者も多いです。
異業種M&Aの場合、本業で培ったナレッジや仕組みを利活用することを見越して新規参入されることが多いです。例えば、空間プロデュース力やマーケティング力、サービスマネジメント力、飲料サービスの質など。また、経験したことのないビジネスとなるため、譲渡後の引き継ぎやキーパーソンの残留、譲渡オーナーとの顧問契約など、PMIに向けた組織体制に関する条件交渉の際にすり合わせていくことが重要となります。

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