M&Aを成功させるためには、仲介会社への手数料がどの程度かかるのかを事前に把握しておくことが重要です。
結論から申し上げますと、M&A仲介手数料の一般的な相場は、取引金額の「1%〜5%(レーマン方式)」です。 ただし、小規模案件では「最低報酬額(500万〜2,000万円)」が適用されるケースが多く、注意が必要です。
2026年現在、M&A仲介会社の増加に伴い「着手金無料」や「完全成功報酬型」など、初期費用を抑えられる料金体系がトレンドとなっています。しかしその一方で、手数料の計算基準が「移動総資産」か「株式譲渡対価」かによって、最終的な支払額が2倍以上変わるといった「見えないコスト」の差も生まれています。
本記事では、複雑な手数料の仕組みをわかりやすく図解し、2026年の最新相場に基づいた「損をしないための仲介会社の選び方」を徹底解説します。
M&A仲介手数料の相場と仕組み

企業の売買を検討する際、仲介会社に支払う費用の全体像を把握することは経営判断において欠かせません。
仲介手数料は一般的に、譲渡金額に応じて段階的に料率が設定される仕組みとなっています。
中小企業のM&Aでは、着手金・中間報酬・成功報酬の総額として譲渡金額の4%〜10%程度が目安となっています。
主な手数料の構成要素は以下の4つです。
- 着手金:契約締結時に支払う初期費用
- 中間金:基本合意締結時などに発生する費用
- 成功報酬:M&A成立時に支払う主要な費用
- 月額報酬:継続的に発生するリテイナーフィー
近年は完全成功報酬型を採用する仲介会社も増加しており、中小企業庁の事業承継支援サイトでも、手数料体系の透明化が推進されており、M&A支援機関データベースでは各社の手数料体系も公開されています。
仲介会社を選定する際は、料金体系だけでなく、成約実績やサポート内容も含めて総合的に判断することが重要です。
M&A仲介手数料の一般的な相場
中小企業のM&Aにおける仲介手数料は、譲渡金額や仲介会社によって大きく異なります。
一般的な相場感を把握するために、譲渡金額別の目安を以下にまとめました。なお、実際の手続きでは、譲渡金額に併せてこの目安想定金額を全て加算した金額が支払いが必要な手数料額となります。
| 手数料相場 | 想定金額 | |
|---|---|---|
| 譲渡金額:1億円以下 | 最低報酬額適用 | 500万円〜2,000万円 |
| 譲渡金額:1億~5億 | 3%〜5% | 500万円〜2,500万円 |
| 譲渡金額:5億~10億 | 2%〜4% | 2,000万円〜4,000万円 |
| 譲渡金額:10億以上 | 1%〜3% | 3,000万円〜 |
特に注意すべきは「最低報酬額」です。
小規模案件では最低報酬額が適用されるケースが多く、実質的な手数料率が高くなる傾向があります。
仲介会社選定の際は、複数社から見積もりを取得し、総額での比較検討を行うことも重要です。
仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の手数料の違い
M&Aの専門家には大きく分けて仲介会社とFA(ファイナンシャル・アドバイザー)の2種類があり、それぞれ役割や手数料の仕組みが異なります。
- 仲介会社: 売り手と買い手の間に入り、双方から手数料を受け取る(両手取引)。
- FA: 一方の味方として交渉し、依頼者のみから手数料を受け取る(片手取引)。
両者の違いを以下の表で比較します。
| 仲介会社 | FA(ファイナンシャルアドバイザー) | |
|---|---|---|
| 立場 | 中立的な仲介者 | 依頼者側の代理人 |
| 手数料の支払元 | 売手・買手双方 | 依頼者のみ |
| 手数料相場 | 成功報酬1%~5% | 成功報酬3%~5% |
| 向いている案件 | 中小企業のM&A | 大型・複雑な案件 |
M&A支援機関情報を参考にしながら、自社の規模や目的に合った専門家を選定することが重要です。
中小企業と大企業のM&A仲介手数料の違い
企業規模によって、M&Aにかかる仲介手数料は大きく異なります。
中小企業の場合、譲渡金額が数千万円〜数億円規模であっても、一定の業務工数(マッチング、面談同席、DD調整・実施サポート、各種契約書作成など)が発生するため、手数料率は比較的高めに設定される傾向があります。
| 中小企業 | 大企業 | |
|---|---|---|
| 譲渡金額 | 数千万円〜数億円 | 数十億円以上 |
| 手数料率 | 1%〜5%程度 | 3%以上 |
| 最低報酬 | 500万円〜2,000万円 | 設定なしの場合も |
大企業のM&Aでは、譲渡金額が料率は低く抑えられますが、取引額が大きいため絶対額は数億円単位になります。
一方、中小企業は「最低報酬額」の設定によってコストが割高になる可能性があるため、案件規模に見合った仲介会社を選ぶことがコスト削減の鍵となります。
参照:中小M&Aガイドライン
M&A仲介手数料の構成要素

事業承継や会社売却を検討する際、仲介会社に支払う費用の内訳を正確に理解しておくことが不可欠です。
以下で、一般的な料金体系の内訳と、それぞれの相場について解説します。
【一覧表】一般的な料金体系の内訳
M&A仲介会社に依頼する際は、どのタイミングでどのような費用が発生するのかを事前に把握しておくことが大切です。
以下の一覧表で、各費用項目の概要と相場をご確認ください。
| 発生タイミング | 相場目安 | |
|---|---|---|
| 相談料 | 初回面接時 | 無料〜1万円程度 |
| 着手金 | 仲介契約締結時 | 50万〜200万円 |
| 中間金 | 基本合意書締結時 | 成功報酬の10〜20%(50万〜200万円程度) |
| 成功報酬 | 最終契約・クロージング時 | 譲渡金額の1〜5% |
| リテイナーフィー | 毎月 | 月額30万〜100万円 |
近年は着手金・中間金を無料とする「完全成功報酬型」の仲介会社が増加傾向にあります。
M&A支援機関登録制度に登録された仲介会社は、料金体系の明示が義務付けられています。
契約前に複数社から見積もりを取り、手数料総額やサポート体制の比較を行いましょう。
相談料・着手金・月額報酬(リテイナーフィー)
M&Aの初期段階で発生する費用は、「成約しなくても発生するコスト」である点に注意が必要です。
以下の表は、各費用の特徴を整理しています。
| 支払い時期 | 特徴・注意点 | |
|---|---|---|
| 相談料 | 初回面接時 | 多くの会社が無料で対応しています。 |
| 着手金 | 契約締結時 | 原則返金されません。資金計画に影響します。 |
| リテイナーフィー | 毎月 | 案件が長期化すると総額が膨らむリスクがあります。 |
着手金は、M&Aが不成立となった場合でも返金されないことが一般的です。
そのため、着手金の有無は資金計画に大きく影響します。
リテイナーフィーは、専任アドバイザーの継続的なサポートに対する対価です。
案件が長期化すると総額が膨らむリスクがあるため、契約前に期間の目安を確認しておきましょう。
中小企業庁の中小M&Aハンドブックでも、これらの費用体系を事前に把握することの重要性が示されています。
中間金(中間報酬)
基本合意書を締結したタイミングで発生する費用が、中間金または中間報酬と呼ばれるものです。
M&A交渉が一定段階まで進んだことを示す「節目」の報酬として設定されます。
- 金額の目安: 成功報酬の10〜20%、または固定50〜200万円
- 注意点: 基本合意後に破談となった場合でも、原則として返金されません。
注意すべき点として、基本合意後にM&Aが不成立となった場合でも、中間金は原則として返金されません。
そのため、中小企業庁の中小M&Aハンドブックでも、契約前に条件を必ず確認するよう注意喚起されています。
近年では中間金を設けない仲介会社も増えているため、リスクを抑えたい場合はこうした業者を選ぶのも一つの手です。
成功報酬(レーマン方式)
成功報酬は、M&A成立時に支払う、最も大きなウェイトを占める費用です。
多くの仲介会社では、取引金額が大きくなるほど料率が下がる**「レーマン方式」**という計算方法を採用しています。
具体的なレーマン方式による料率のイメージ例は、以下のとおりです。
- 5億円以下の部分:5%
- 5億円超〜10億円以下の部分:4%
- …(取引額に応じて逓減)
注意すべき点は、計算の基準となる「取引金額」の定義が仲介会社によって異なることです。
株式価格のみを基準とする場合と、負債を含めた移動総資産を基準とする場合では、同じ案件でも手数料に大きな差が生じます。
つまり、「何を基準に料率をかけるか(計算基準)」は会社によって異なり、これによって手数料が数千万円単位で変わることがあります。
※詳しい計算式や料率テーブル、計算基準による金額差については、後述の「【図解】M&Aの成功報酬計算式「レーマン方式」を完全解説」で詳しくシミュレーションします。
M&A支援機関登録制度では、料金体系の明確化が求められているため、契約前にこの基準を必ず確認するようにしましょう。
デューデリジェンス費用(買収監査費用)と実費
M&A取引において、仲介手数料とは別に、買い手企業が対象会社のリスクを調査するための「デューデリジェンス(DD)」費用が発生します。
これは仲介会社ではなく、公認会計士や弁護士などの専門家に支払う実費です。
この調査は一般的に以下の分野で実施されます。
- 財務DD:決算書の正確性、簿外債務の有無などを調査
- 法務DD:契約書、訴訟リスク、許認可の確認
- 税務DD:税務申告の適正性、繰越欠損金の確認
- ビジネスDD:事業の将来性、競合環境の分析
これらの調査は公認会計士や弁護士などの専門家に依頼するため、規模によりますが、1分野あたり数十万〜数百万円が相場です。
仲介会社によっては、この費用が成功報酬に含まれる場合と、実費として別途請求される場合があります。
経済産業省の中小M&Aガイドライン改訂(第三版)でも、適切な調査の重要性が示されています。また、仲介会社はあくまでも「サポート役」に徹することが重要であり、デューデリジェンスに直接関与しない範囲でサポートする旨も記載がありますので、契約前に費用負担の範囲とサービス範囲を確認しておくことが大切です。
【トレンド】最近増えている「完全成功報酬型」とは?

近年のM&A市場では、売り手企業にとってリスクを軽減できる料金体系が注目を集めています。
完全成功報酬型とは、その名の通り「M&Aが成立するまで一切の費用が発生しない」料金体系のことです。
従来の仲介サービスでは「着手金」や「中間金」が必要でしたが、この方式ではそれらが不要となります。
完全成功報酬型の主な特徴は、以下の通りです。
- 初期リスクゼロ: 着手金・中間金が無料
- 実務サポート: 相談・企業価値算定も無料で対応
- 不成立時: 費用負担は一切なし
- 支払い: 成約時の「成功報酬」のみ
この料金体系が増加している背景には、中小企業庁が推進する事業承継支援策があります。
後継者不足に悩む中小企業がM&Aを検討しやすい環境づくりが進められているのです。
ただし、完全成功報酬型であっても最低報酬額が高く設定されているケースもあるため、契約前に条件を十分確認することが大切です。
完全成功報酬型のメリット・デメリット
この料金体系を採用する際には、「初期費用無料」は魅力的ですが、メリットだけでなくデメリットも理解した上で採用することが大切です。
【メリット】
-
M&Aが成立しない限り費用が発生しないため、初期投資のリスクを回避できる
-
着手金や中間金が不要なので、資金繰りへの影響を最小限に抑えられる
-
複数の仲介会社に相談しやすく、比較検討がしやすい
-
仲介会社も「成約させないと報酬ゼロ」のため、真剣に取り組むインセンティブが働く
【デメリット】
-
リスクヘッジのため、成功報酬の料率が高めに設定されているケースがある
-
成約の見込みが低い案件は、仲介会社の優先度が下がる可能性がある
-
「最低報酬額」が高く設定されている場合、小規模案件では割高になることも
経営者の方は、自社の譲渡規模や財務状況に応じて最適な料金体系を選択することが重要です。
着手金無料でも注意すべき「最低報酬額」
「着手金無料だから」と安易に仲介会社を選んでしまうと、最終的に想定外の費用が発生する可能性があります。その原因となるのが「最低報酬額(ミニマムフィー)」の存在です。
最低報酬額とは、成功報酬の計算結果(レーマン方式)に関わらず、必ず支払わなければならない下限金額を指します。
主要な仲介会社の最低報酬額は以下の通りです。
| 会社タイプ | 最低報酬額の目安 |
|---|---|
| 大手仲介会社 | 2,000万円〜2,500万円 |
| 中堅仲介会社 | 500万円〜1,500万円 |
| 小規模専門会社 | 100万円〜500万円 |
例えば、譲渡金額が3,000万円でレーマン方式5%の場合、計算上の手数料は150万円です。しかし、その仲介会社の最低報酬額が「1,000万円」と設定されていれば、支払額は1,000万円になります。
特に小規模案件では、この最低報酬額が実質的な手数料率を大きく跳ね上げる要因となります。契約前に必ず確認しておきましょう。
【図解】M&Aの成功報酬計算式「レーマン方式」を完全解説

M&Aにおける成功報酬の算出には、業界標準として広く採用されている「レーマン方式」という計算式があります。
これは、取引金額が大きくなるほど、その超過部分に対して適用される料率が低くなる(逓減する)仕組みです。
レーマン方式の一般的な料率体系は以下の通りです。
| 取引金額の区分 | 料率 |
|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超 〜 10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超 〜 50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超 〜 100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
この料率表は、大型案件における手数料負担を軽減するために合理的に設計されています。
ただし、算出の元となる「取引金額」を「株式価値」とするか「移動総資産」とするかで総額が大きく変わるため、注意が必要です(これについては後述します)。
中小企業庁が公表しているM&A支援機関登録制度でも、手数料体系の透明化が推進されており、各社の手数料を確認することができます。
経営者の皆様がM&Aを検討される際は、この料率構造を正しく理解した上で、複数の仲介会社から見積もりを取得することをお勧めします。
【シミュレーション】レーマン方式の具体的な計算例
では、実際の取引金額を用いて、成功報酬がいくらになるのか試算してみましょう。
ここでは分かりやすく「売買価格5億円」と「売買価格10億円」の2パターンで計算します。
売買価格5億円の計算例
譲渡対価が5億円の場合、全額が「5億円以下の部分」に該当するため、計算はシンプルです。
具体的な計算式と結果は以下の通りです。
| 計算区分 | 計算式 | 手数料額 |
|---|---|---|
| 5億円以下の部分 | 5億円 × 5% | 2,500万円 |
| 合計 | - | 2,500万円 |
上表のように、5億円×5%=2,500万円が成功報酬となります。
ただし、前述の通り「最低報酬額」が2,500万円以上に設定されている(大手仲介会社などの)場合は、そちらの金額が適用されます。
経営者の皆様は、見積もり取得時に最低報酬額の有無を必ず確認してください。
売買価格10億円の場合の計算例
続いて、取引規模が10億円の場合、「5億円までの部分」と「5億円を超える部分」で料率が変わります。ここがレーマン方式の少し複雑な点です。
具体的な計算内訳を見てみましょう。
| 計算区分 | 対象金額 | 料率 | 報酬額 |
|---|---|---|---|
| ① 5億円以下の部分 | 5億円 | 5% | 2,500万円 |
| ② 5億円超〜10億円の部分 | 5億円 | 4% | 2,000万円 |
| 合計(①+②) | 10億円 | ― | 4,500万円 |
上表のように、単純に10億円×5%で計算すると5,000万円ですが、レーマン方式では段階的に料率が下がるため、合計は4,500万円となります(※500万円安くなる計算)。
このように、取引額が大きくなればなるほど、レーマン方式による割安効果が働きます。
しかし、ここで安心するのは早計です。
次の章で解説する「算出基準(移動総資産か株式価値か)」の違いによって、この計算結果が大きく覆る可能性があるからです。
ここが落とし穴!手数料が倍変わる「算出基準」の違い

M&A仲介手数料を比較する際、多くの経営者が見落としがちなのが「何を基準に報酬を計算するか(算出基準)」の違いです。
たとえ同じ「レーマン方式(料率5%など)」を採用している業者同士でも、この算出基準が異なれば、最終的な請求額が2倍以上変わるケースも珍しくありません。
主な算出基準には以下の種類があります。
- 株式価値基準(株式譲渡対価ベース)
買い手が支払う「株式の価格」のみを対象とする。売り手にとって最も手数料が安くなりやすい。
- 企業価値基準
株式価値に「有利子負債(銀行借入など)」を加算した額を対象とする。
- 移動総資産基準(総資産ベース)
株式価値に「負債総額(借入金+買掛金などの負債全て)」を加算した額を対象とする。最も手数料が高額になりやすい。
例えば、株式譲渡価格が3億円、有利子負債が2億円の場合、株式価値基準なら3億円、企業価値基準なら5億円が計算の基礎となります。
中小企業庁の事業承継支援ページでも、仲介契約時に算出基準を確認することの重要性が示されています。
仲介会社との契約書にハンコを押す前に、必ず「どの基準で計算するのか」を契約書上でも確認しましょう。
「移動総資産ベース」と「株式譲渡対価ベース」の違い
特に注意が必要なのが、多くの仲介会社で採用されている「移動総資産ベース」と、売り手に有利な「株式譲渡対価ベース」の違いです。
両者の違いを分かりやすく図解・比較すると以下のようになります。
| 移動総資産ベース | 株式譲渡対価ベース | |
|---|---|---|
| 計算の対象 | 株式価格 + 負債総額 | 株式価格のみ |
| 特徴 | 負債(借金)まで手数料計算に含まれる | 純粋な売却益のみに手数料がかかる |
| 手数料額 | 高くなる傾向がある | 安く抑えられる |
上表の通り、なぜ「移動総資産ベース」は高くなるのか?
それは、移動総資産ベースでは、会社が抱えている「借金(負債)」に対しても手数料率が掛けられます。そのため、借入金が多い企業や、買掛金などの流動負債が多い企業の場合、手元に残る現金(株式対価)は少ないのに、手数料だけが高額になるという現象が起きます。
契約前に必ずどちらの方式を採用しているか確認しましょう。
同じ条件でも手数料が大幅に違う?比較シミュレーション
算出基準の違いがどれほど手数料に影響するか、具体的な数字でシミュレーションしてみましょう。この結果を見れば、なぜ「基準の確認」が重要なのかが一目瞭然です。
【試算の前提条件】
- 株式譲渡価格: 3億円(売り手が受け取る額)
- 有利子負債: 2億円(銀行借入など)
- その他負債: 1億円(買掛金・未払金など)
- 適用料率: 一律 5% と仮定
<算出基準による手数料の違い>
| 算出基準 | 計算対象となる金額 | 手数料額 (5%) | 備考 |
|---|---|---|---|
| ① 株式価値基準 | 3億円 | 1,500万円 | 最も安い |
| ② 企業価値基準 | 5億円 (3億+2億) | 2,500万円 | +1,000万円 |
| ③ 移動総資産基準 | 6億円 (3億+2億+1億) | 3,000万円 | +1,500万円 |
上表の通り、その差は歴然です。
同じ「3億円で会社を売る」という取引にも関わらず、算出基準が違うだけで手数料が2倍(1,500万円の差)になっています。
①の業者を選べば手元に2億8,500万円残りますが、③の業者だと2億7,000万円しか残りません。
見積もりを取得する際は、単に「料率(%)」を見るだけでなく、必ず「計算対象額(ベース)」を確認し、総額で比較検討することを強くお勧めします。
業者タイプ別!M&A仲介手数料の相場比較

M&A仲介会社は大きく分けて4つのタイプに分類され、それぞれ手数料体系や強みが異なります。自社に最適なパートナーを選ぶためには、各タイプの特徴と費用感を理解しておくことが大切です。
主要な業者タイプと手数料相場は以下の通りです。
| 業者タイプ | 着手金 | 成功報酬率 | 最低報酬額 |
|---|---|---|---|
| 大手仲介会社 | 100万〜300万円 | 5%前後 | 2,000万〜 |
| 金融機関 | ケースバイケース | 3〜5% | 1,000万〜 |
| 特化型・ブティック | 無料〜100万円 | 3〜5% | 500万〜 |
| マッチングサイト | 無料 | 1〜3% | 100万〜 |
大手仲介会社は豊富な実績とネットワークが強みですが、費用は高めです。
一方、中小企業に特化した仲介会社やマッチングサイトは、コストを抑えやすい傾向にあります。
以下でそれぞれの業社タイプ別に、詳しく解説していきます。
大手M&A仲介会社
日本M&Aセンター、ストライク、M&Aキャピタルパートナーズなどの上場企業が代表的です。
大手仲介会社の主な特徴は以下の通りです。
- 特徴: 全国規模のネットワークと、上場企業としての高い信頼性。
- 向いている企業: 譲渡金額が数億円以上の中規模〜大規模案件。
- 注意点: 最低報酬額が2,000万円以上に設定されていることが多く、小規模案件では手数料負け(譲渡益の多くが手数料で消える)するリスクがあります。
上述のように、業界でも最大規模のネットワークや実績がある一方で、費用面では着手金が100万〜300万円、最低報酬額が2,000万円以上に設定されていることが多く、譲渡金額が数億円以上の案件に適しています。
中小規模の案件では費用対効果が見合わないケースもあるため、自社の規模や目的に応じた選択が重要です。
大手各社の詳細な情報はM&A支援機関登録制度で確認できます。
金融機関(銀行・証券会社)
普段付き合いのあるメインバンクや証券会社がM&A仲介を行うケースです。
金融機関の主な特徴は以下の通りです。
- 特徴: 既存取引があるため相談しやすく、買収資金の融資相談もスムーズ。
- 相場: 手数料は大手と同等かやや高めで、最低報酬額も1,000万〜3,000万円程度が一般的。
- 注意点: 自社の融資先同士をマッチングさせる「利益相反」のリスクや、行内のしがらみで最適な相手が見つからない可能性があります。
成功報酬率は3〜5%程度で、最低報酬額は1,000万〜3,000万円に設定されていることが一般的です。
ただし注意点として、金融機関は自社の融資先を紹介するケースが多く、売り手・買い手双方にとって最適なマッチングとならない可能性があります。
また、M&A専門ではないため、対応できる案件規模や業種に制限がある場合もあります。
詳細は、金融庁公式サイトで金融機関の業務範囲をご確認ください。
特化型・ブティック型仲介会社
特定の業界(医療、IT、製造など)や、中小規模案件に特化した専門会社です。
特化型・ブティック型仲介会社の主な特徴は以下の通りです。
- 特徴: 業界知識が深く、柔軟な料金設定や交渉対応が可能。
- 相場: 着手金無料の会社も多く、最低報酬額も500万円〜とリーズナブル。
- 向いている企業: 年商数億円以下の中小企業や、特定の専門知識が必要な業種。
手数料相場は成功報酬3〜5%程度で、最低報酬額も500万〜1,500万円と大手より低めに設定されているケースが多いです。
コストを抑えつつ専門的なサポートを受けたい経営者にとって、最もバランスの取れた選択肢といえます。
製造業、医療・介護、IT、飲食など業界ごとに専門性を持つ会社を選ぶことで、適正な企業価値評価と最適な買い手候補のマッチングが期待できます。
詳しい情報は、M&A支援機関登録制度で確認可能です。
M&Aマッチングサイト
オンライン上で売り手と買い手を直接つなぐプラットフォームです。
主なメリットと注意点は以下の通りです。
- 特徴: 仲介者を介さず直接交渉できるため、手数料が圧倒的に安い。
- 相場: 成功報酬 1〜3%程度(利用料無料のサイトも多い)。
- 注意点: デューデリジェンスや契約書作成などは自己責任、または別途専門家への依頼が必要です。M&A経験者向けのツールと言えます。
最大の特徴は、仲介手数料を大幅に抑えられる点です。
従来の仲介会社を介さずに当事者同士が交渉できるため、コスト削減を重視する経営者に支持されています。
一方で、専門家のサポートが限定的なため、M&A経験のない方にはハードルが高いこともあります。
デューデリジェンスや契約書作成は別途専門家への依頼が必要です。
M&A支援機関登録制度で認定されたプラットフォームを選ぶと安心です。
手数料・コストを抑えてM&Aに成功した事例(モデルケース)

実際にM&A仲介の費用を最小限に抑えながら、円滑に事業承継を実現した企業は数多く存在します。ここでは、コスト削減と成功を両立させた代表的な事例をご紹介します。
成功事例に共通するポイント
- 複数の仲介会社から見積もりを取得し、比較検討を徹底した
- 「着手金無料」や「完全成功報酬型」の仲介会社を選定した
- 自社の規模(譲渡額)に見合った「最低報酬額」の会社を選んだ
特に中小企業庁が運営する事業承継・引継ぎ支援センターを活用することで、初期相談からマッチングまでを無料で受けられるケースもあります。
また、M&A支援機関登録制度を利用し、登録事業者に依頼することで、一定の品質が担保された仲介サービスを適正価格で受けることが可能です。
モデルケース1:相見積もりで手数料体系を比較し、コストダウンしたケース
まずは、製造業を営むA社(年商3億円)の事例です。
当初相談した1社の手数料が高額だったため、他社と比較検討(相見積もり)を行いました。
<A社が取得した見積もりの比較>
| 項目 | 1社目(大手) | 2社目(中堅) | 3社目(特化型) |
|---|---|---|---|
| 着手金 | 100万円 | 50万円 | 無料 |
| 中間金 | あり | 無料 | 無料 |
| 成功報酬率 | 5% | 4% | 3.5% |
| 最低報酬額 | 2,000万円 | 1,500万円 | 500万円 |
比較の結果、条件の良かった3社目(特化型)を選定したことで、当初の見積もりより約800万円のコスト削減に成功しました。
このように、1社で即決せず複数社を比較することは、数百万円単位の利益確保に直結します。
中小企業庁の事業承継ガイドラインでも、複数社の比較検討が推奨されています。
モデルケース2:最低報酬額の設定を見直し、小規模M&Aを成立させたケース
続いて、年商5,000万円のサービス業の事例です。
売却希望価格が約4,000万円に対し、相談した会社の最低報酬額が「2,000万円」でした。これでは手元に半分しか残りません。
そこで、小規模M&Aに強い仲介会社へ切り替えました。
- 当初の提案: 最低報酬 2,000万円(売却価格の50%)
- 切り替え後: 最低報酬 500万円(売却価格の12.5%)
- 削減効果: 1,500万円の手数料削減
ここでの教訓としては、小規模案件においては、「料率(%)」よりも**「最低報酬額(円)」**が実質的な負担を左右します。
自社のサイズ感に合った最低報酬額を設定している会社を選ぶことが、成功への鍵となります。
M&A仲介会社選びで失敗しないためのチェックポイント

事業承継や会社売却を検討する経営者にとって、信頼できるパートナーを見つけることは成功への第一歩です。
仲介会社の選定を誤ると、想定より低い売却価格での成約や、交渉の長期化によるビジネスへの悪影響を招く恐れがあります。
適切な仲介会社を選ぶために、以下の6つのポイントを必ず確認しましょう。
- 業界・業種における実績と専門知識の有無
- 担当者の経験年数と過去の成約件数
- 料金体系の透明性と説明の丁寧さ
- 情報管理体制とセキュリティ対策
- 買い手候補のネットワークの広さ
- アフターサポートの充実度
特に中小企業のM&Aでは、条件面だけでなく、経営者同士の相性や企業文化の親和性も重要な要素となります。即決せず、必ず複数の仲介会社から提案を受け、比較検討することをお勧めします。
なお、中小企業庁が公表している中小M&Aガイドラインも、仲介会社選びの参考になります。
手数料体系の透明性と見積もりの総額
M&A仲介会社を選ぶ際、最も重視すべき点の一つが「料金体系の明確さ」です。
信頼できる仲介会社は、着手金・中間金・成功報酬・月額顧問料など、すべての費用項目を契約前に明示します。
見積り時に確認すべきポイントは以下の通り4点あります。
- 成功報酬の計算基準(株式価額ベースか、移動総資産ベースか)
- 最低報酬額の有無と金額
- デューデリジェンス費用の負担先(買い手負担か否か)
- 交通費・出張費などの実費精算の有無
また、M&Aが成約した場合の総額だけでなく、「万が一、不成立だった場合に発生する費用(着手金や中間金)」も必ず確認しましょう。
中小企業庁が公表するM&A支援機関登録制度では、手数料の透明性確保が登録要件となっています。
登録機関を選ぶことで、不明瞭な追加請求を避けられる可能性が高まります。
Buyside Bankでは、お客様に安心してご依頼いただけるよう、透明性の高い料金体系を提示しております。
「両手取引」と「片手取引」の利益相反リスク
M&A仲介には、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る「両手取引」と、一方のみから受け取る「片手取引」の2つの形態があります。
| 取引形態 | 報酬の受取 | 特徴・リスク |
|---|---|---|
| 両手取引 | 双方から | 【利益相反のリスクあり】 仲介者が板挟みになり、どちらかに有利な条件(価格調整など)を提示する可能性がある。 |
| 片手取引 | 一方のみ | 【依頼者の利益を優先】 FA(ファイナンシャルアドバイザー)形式。依頼者の最大利益のために交渉を行う。 |
例えば、両手取引の場合、仲介会社が「早期成約」を優先するあまり、売り手に対して「もう少し安くすれば売れますよ」と不利な価格交渉を促すケースも指摘されています。
中小企業庁の中小M&Aガイドラインでも、この利益相反リスクへの対応が求められています。
契約前に「御社はどちらの立場で交渉してくれるのか」を確認し、利益相反防止策について明確な説明を受けることが重要です。
中小M&Aガイドライン遵守と手数料公表の有無
2024年の改訂により、中小M&Aガイドラインでは仲介会社に対し、手数料体系の事前開示がより強く求められるようになりました。
信頼できる仲介会社を見極める基準は以下の通りです。
- 中小M&Aガイドラインの遵守を明言しているか
- 自社ウェブサイトで手数料体系を公開しているか
- 見積もり段階で総費用の目安(シミュレーション)を提示してくれるか
ガイドラインを遵守する仲介会社は、国の「M&A支援機関登録制度」にも登録されています。
手数料を公表していない、あるいは「ケースバイケースです」と濁す仲介会社は、後から想定外の費用を請求される可能性があるため注意が必要です。
契約前に必ず書面で料金体系の説明を受けましょう。
M&A仲介手数料に関するよくある質問
M&Aの実施を検討する経営者の皆様から、仲介手数料について多くのご質問が寄せられています。
特に初めてM&Aに取り組む方にとって、料金体系の複雑さや専門用語は大きなハードルです。
ここでは、頻繁にいただく疑問点をQ&A形式で解説します。
Q. 売り手と買い手、手数料はどちらが負担しますか?
日本のM&A仲介では、「双方」が負担するのが一般的です。
主な形態については、次の通りになります。
- 両手仲介(一般的): 売り手・買い手の両方が、それぞれの仲介契約に基づいて手数料を支払います。
- 片手仲介・FA: 依頼した側(売り手なら売り手のみ)が支払います。
- 売り手無料型: 買い手のみが手数料を負担し、売り手は無料となるサービスもあります。
近年は「売り手手数料無料」を謳う業者も増えていますが、その分「買い手の手数料が高く設定され、結果として譲渡価格から差し引かれている(実質的な手取りは変わらない)」ケースもあるため、トータルでの判断が必要です。
契約前に料金体系を必ず確認し、総コストを把握した上で仲介会社を選定することが重要です。
Q. 契約途中で解約した場合、着手金は返金されますか?
原則として、着手金は返金されません。
着手金は、M&A仲介会社が企業価値評価や候補先の探索(マッチング)といった初期業務を開始するための「手付金」としての性質を持つためです。
返金可否に関する一般的なルールは以下の通りです。
- お客様都合による解約: 返金不可
- 仲介会社の過失による解約: 返金される可能性あり
トラブルを防ぐため、契約書(アドバイザリー契約書)の「解約条項」と「返金規定」は必ず契約前に確認してください。
中小企業庁が公表する中小M&Aガイドラインでは、契約内容の透明性確保が推奨されています。
不明点があれば契約締結前に仲介会社へ書面で確認し、後のトラブルを防ぐことが大切です。
Q. 税務上の処理(勘定科目)はどうなりますか?
「株式取得(買い手)」か「事業譲渡」かによって異なります。
主な勘定科目と処理方法は以下のとおりです。
| 取引内容 | 勘定科目 | 税務上の取扱い |
|---|---|---|
| 株式取得の手数料 | 株式取得価額 | 資産計上(売却時まで経費にできない) |
| 事業譲渡の手数料 | 支払手数料 | 発生時に損金算入(経費)可能 |
| DD費用など | 支払手数料 | 原則として損金算入可能 |
特に買い手企業様の場合、仲介手数料は「取得原価」に含まれるため、その期の即時償却(損金扱い)ができない点にご注意ください。
詳細な取扱いについては、国税庁ホームページや顧問税理士にご確認されることをお勧めします。
適正な手数料で信頼できるパートナーを選ぼう

M&Aを成功させるためには、仲介手数料の仕組みを正しく理解し、自社に合った仲介会社を選ぶことが何よりも大切です。
本記事では、M&A仲介手数料の種類や相場、レーマン方式による計算方法、そしてコストを抑えるためのポイントについて解説してきました。
手数料の安さだけで判断するのではなく、担当者の経験や実績、サポート体制、成約までのスピードなど総合的な観点から比較検討することが重要です。
信頼できるパートナーと出会うことで、適正な価格での売却や、円滑な事業承継の実現につながります。
M&Aや事業承継をご検討中の経営者様は、ぜひ一度専門家にご相談ください。
当社では、お客様の状況に応じた最適なM&A戦略のご提案から成約までを一貫してサポートしております。 不明瞭な追加費用は一切なく、透明性の高い料金体系で納得のいくM&Aを実現します。
- 「自社の場合、手数料はいくらになる?」
- 「他社の見積もりが適正か診断してほしい」
など、まずはお気軽にご相談ください。