M&Aでおさえたいポイント
M&Aの企業価値評価(株式価額の算定)
現在の株式価値がわかると、
将来にむけた打ち手が
見えてきます。
会社の価値評価は、「いま自分の会社はいくらの価値があるのか?」を知るためだけのものではありません。
評価を通じて「どのような計算で、この価値になるのか」という算出の仕組みが分かると、M&Aを実行するまでに「どの数字を伸ばせば、会社の価値が上がるのか」という具体的な経営目標が明確になります。また、目標となる株価が見えてくれば、それは将来受け取る対価=ご自身の“M&A後の人生設計”にもつながる数字になります。
今の価値を知ることは、会社の成長目標とオーナーご自身の未来、その両方のこれからの準備と選択をより現実的に、前向きにしてくれます。M&Aの企業価値評価とは、会社の健康診断書であり、未来への地図を手に入れるようなものといえます。
M&Aの企業価値評価はいつやるべきか
M&Aの「決断」と未来への「準備」。株式価値評価には2つのタイミングがあります。
「会社の価値は、いつ調べるのがもっとも良いのだろう?」多くの経営者が判断に迷う点だと思いますが、有効なタイミングは大きく分けて2つあると私たちは考えています。
1つは、会社売却の検討段階です。この段階では、M&A後の人生設計を考えたり、買い手に提示する希望価格を検討したりするために、会社の「現在価値」を算定します。
もう1つは、将来の事業承継や売却を見据えて、未来の目標を設定するタイミングです。たとえば「3年後に、このくらいの価値で会社を譲りたい」というゴールを定め、そのために今から何をすべきか、具体的な道筋を描くために行います。
会社売却を決断する上でも、準備をする上でも、会社の価値を測ることは自ら機会をつくりだす“第一歩”になり得ます。「事業承継やM&Aを何となく考えているが、具体的に何から始めればいいか迷っている」という方は、ぜひ一度価値評価を試してみて下さい。わかることで、見えてくるものもございます。
株式価値の定期診断について
あの時、価値を調べておけば…。経営者の後悔をなくす、株式価値の定期診断。
人間ドックは、日常生活では意識しづらい数値を把握したり、手遅れになる前に病を早期発見したりする効果があります。会社の株式価値評価も同じで、決算書を眺めるだけではわかりづらい超過収益力(将来の利益をあげる力)を測ったり、事業承継やM&Aの問題を早期発見したりすることに役立ちます。
会社を承継することは、経営者最後の大仕事と言えます。しかし、「いざ売却を考えた時には、数年前より価値が下がっていた…」そう言って肩を落とす経営者様は、残念ながら少なくありません。さらにいうと、売却を断念されるケースも少なくなく、そのたびに機を見極めることの難しさを私たちも痛感させられます。
後悔のないM&A(第三者への事業承継)を実現する上で、理想的なのは会社も経営者自身も健康なときに決断することです。自ら決断するには機を見極めなければなりませんが、株式価値評価はその機を見極めるための1つの指標になります。
ある年齢を超えた大人が、毎年、人間ドックを受けるように。事業承継やM&Aを意識し始めた経営者が、毎年の決算後に株式価値を測ることは、機を逸しない重要な習慣になると思います。
相続とM&Aにおける株式価値評価の違い
「税務署が見る価値」と「買い手が見る価値」は、全くの別物です。
相続税を計算するための株価と、M&Aで会社を売却するときの株価は同じではありません。土地の相続税評価額(路線価)と、実際に不動産屋さんで売れる価格(時価)が違うのと同じです。
たとえば相続のための株価評価は、税務署に納得してもらうための“ルールに基づいた評価。過去の業績をもとに、公平性を重視して計算されます。一方、M&Aの株価評価は、買い手との交渉で決まる“将来性を含んだ評価”です。今後の成長性やシナジー効果など、買い手にとっての魅力が価格に反映されます。
このように、相続とM&Aでは株式評価の目的が異なりますので、「見える価値」は大きく変わるのです。「相続のときの評価が〇〇円だったから、売却もそのくらい」とは限りません。M&A成功の第一歩は、会社の未来を正しく評価することにあります。
| 相続における株式価値評価 | M&Aにおける株式価値評価 | |
|---|---|---|
| 評価の 当事者 |
相続人(納税者) 税務当局(国税庁) |
株式の買い手 株式の売り手 |
| 評価の 目的 |
相続税や贈与税の計算するための評価あくまで「課税の公平性」を担保するために、法律に基づき財産価値を算定することが目的 | 株式売買の交渉価格を決定するための評価買い手と売り手が合意できる「公正な市場価値(時価)」を、合理的に算定することが目的 |
| 主な 評価方法 |
原則的評価方式類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用など、国税庁が定める「財産評価基本通達」という全国一律の税法上のルールで算定 | 複数のアプローチの併用財務・金融理論である3つの評価アプローチ(コスト、インカム、マーケット)を合理的に組み合わせ、多角的に算定 |
| 成長性・ 将来性の 考慮 |
のれん・営業権等とも称される成長性・将来性を基本的に考慮しない(過去の実績ベースで評価) | のれん・営業権等とも称される将来キャッシュフローや成長見通しを考慮する |
| 最終的な 株価 |
ルールに基づき、理論的に一意に計算される「評価額」 | 株式評価価額のレンジ(範囲)を参考に、交渉によって決定される「取引価格」 |
M&A特有の営業権(のれん)とは
なぜM&Aの価格は高くなるのか?営業権(のれん)が関係しています。
相続税の計算では、会社の価値は貸借対照表にある「純資産(資産と負債の差額)」が主な基準でした。しかし、M&Aの場合、会社の価値はその純資産に「目に見えない価値」が上乗せされて決まります。それが「営業権(のれん)」です。これは、長年の経営で培ったお客様からの信頼、従業員の皆様が持つ技術力、地域での評判、そして独自のブランドといった、帳簿には載らない会社の本当の強みを指します。
M&Aでは、この営業権(のれん)こそが「将来、大きく稼げる力(利益)」の源泉と見なされ、買い手はそこに大きな価値を感じます。そのため、M&Aの売却価格は純資産を大きく上回ることがほとんどです。相続評価では決して評価されない、経営者が人生をかけて育てたこの「営業権(のれん)」こそ、会社を正当に評価してもらうための最も重要な鍵になります。
M&Aの株式価値評価のアプローチ方法
価格交渉の前に知るべき、買い手が会社を評価する“3つの物差し”。
>M&A時において、最終的な株価は、売り手と買い手との交渉で決まります。つまり、会社の売却を検討するなら、「買い手が株式価値をどのように評価するのか?」を売り手は理解する必要があります。
株式価値の評価方法はいくつもあります。どの評価方法を採用するかは買い手によって異なるのですが、基本的には以下の「3つの物差し」を組み合わせて、会社の価値を多角的に評価しています。
1つ目のコスト・アプローチ。これは会社が持つ資産から負債を差し引いて算出する“清算価値”のようなものです。2つ目はインカム・アプローチ。これは“将来の利益をもとにした価値”を計算するもので、会社の成長性や収益力を最も重視します。3つ目はマーケット・アプローチ。市場で取引されている同じような業種や規模の会社の取引価額や、過去にいくらで取引されたかという“相場感”を基準にします。
M&Aの株式価値を算定する際は、買い手にとっても説得力のある価格帯(レンジ)を見つけ出すために、これら3つの角度から光を当てて算出いたします。
コスト・アプローチとは
“いまの会社の持ち物”で、価値を測る方法です。
M&Aの価格を考える上で、まず基本となるのがコスト・アプローチです。会社の貸借対照表(B/S)にある資産(土地、建物、現金など)の合計から、負債(借入金など)を差し引いた「純資産」を基に価値を計算する方法で、「もし今、会社を解散したらいくら手元に残るか」といった視点で算定されます。実際には、帳簿の価格と現在の価値(時価)が違う土地などを時価に修正し、より現実に即した価値を算出します(修正純資産法)。
ただし、この方法は長年の信用やブランド、将来稼ぐ力といった「目に見えない価値」は価格に反映されません。そのため、「最低限の価値を知るための評価(清算価値)」として活用されることが多いのが特徴です。
インカム・アプローチとは
これから“利益を生み出す力”を評価する方法です。
コスト・アプローチが会社の「今の財産」を評価しているのに対し、このインカム・アプローチは「将来、どれだけのお金を生み出すか?」という未来の利益を生み出す力を基準に評価する方法です。たとえば、今後1年~3年間でどれだけの利益が生まれるかを予測し、それを“今の価値”に換算して評価します。
代表的な手法がDCF法(割引キャッシュフロー法)で、利益の見通しとそれに対するリスク(割引率)を反映して計算します。将来の成長が期待される企業や、新しいビジネスを展開しているベンチャー企業などでは、この方法が特に効果的です。
一方で、予測の精度や前提条件によって結果が大きく変わることもあるため、慎重なシナリオ設定が重要になります。現在よりも“未来”を重視した評価がしたいときに、このアプローチが力を発揮します。
マーケット・アプローチとは
同じ業界の“相場感”で、会社の価値を測る方法です。
マーケット・アプローチは、同じ業種の上場企業が「どれくらいの価格で取引されているか」という“相場”を参考に、自社の価値を推定する方法です。不動産の査定と同様に、周囲の実績をもとに妥当な価格帯を考えるイメージです。
上場企業の株価指標や、過去のM&A取引データを基に、「類似会社比準法」や「類似取引比準法」といった手法で評価されます。ただし、自社が非上場企業である場合は、上場企業と比べて株式の流動性が低いため、一定の割引を行って調整するのが一般的です。
ただし、市場環境やタイミングによって相場が変動するため、売却の“時期”によって評価額が上下しやすい点には注意が必要です。今の市場で、あなたの会社がどのくらいで見られているのか。そんな視点を得たい方に向いている方法です。
実際によく用いられる2つの評価方法
非上場企業と上場企業、買い手がよく用いる評価方法は異なります。
M&Aの買い手は、3つのアプローチを組み合わせて多角的に企業価値を評価するのですが、その中でもよく用いられる手法が2つあります。
1つは、「時価純資産+営業権法」です。中堅・中小企業をはじめ、非上場企業が買い手になる場合によく用いられます。これは会社が持っている資産に、その会社特有の信用力や収益力といった“営業権(のれん)”を上乗せして計算する方法で、コスト・アプローチとインカム・アプローチの手法を組み合わせた計算方法になります。
もう1つが、「EV/EBITDA倍法」です。上場企業やファンドなどが買い手になる場合によく用いられます。これは利益(EBITDA)に業界平均の倍率をかけて企業価値を算出する、マーケット・アプローチの一種となります。
「誰が買い手になるか」によって、会社の価値の測り方そのものが変わります、売却を検討する際は、買い手のタイプに応じた評価の考え方を知っておくことが、納得できる取引の第一歩になります。
中堅・中小M&Aで多い「時価純資産+営業権法」
「時価純資産+営業権法」は会社の財産と稼ぐ力を足し算して算出します。
非上場企業が買い手になる場合によく用いられるのが「時価純資産+営業権法」です。考え方は非常にシンプルで、B/S(貸借対照表)とP/L(損益計算書)からそれぞれで会社の価値を算出し、2つを足し算して計算します。
まず1つ目は「①時価純資産」です。B/S(貸借対照表)に載っている土地や建物などを、帳簿の古い価格ではなく“現在の価値”に評価し直し、そこから借入金などを差し引いた、いわば会社の土台となる価値です。
そして2つ目が、その土台に上乗せする「営業権(のれん)」です。これは、長年培ってきたお客様からの信頼やブランド、そして将来数年間に生み出すであろう利益など、会社の「稼ぐ力」を評価したものです。
この「今の財産の価値 + 未来の稼ぐ力の価値」という堅実な計算方法は、多くの経営者様にとって納得感が高く、中小企業M&Aの基本的な物差しとなっています。
B/S(貸借対照表)を時価修正する方法
会社の土地や在庫、機械、積立保険等… 今の本当の値段はいくら?
会社の貸借対照表(B/S)は財産リストですが、そこに載っている数字は「過去に取得した時の価格(簿価)」です。M&Aでは、まずこれを「今の本当の価値(時価)」に修正する作業が欠かせません。
例えば、30年前に1千万円で取得した土地が、今では5千万円の価値になっているかもしれません。逆に、大切に使ってきた機械も、現在の価値は大きく下がっているでしょう。また、帳簿上は資産でも、実際には売れない古い在庫は価値をゼロとして見直す必要があります。
さらに、帳簿には見えない将来の退職金の支払い義務(簿外債務)など、隠れた負債が潜んでいることもあります。
このように資産や負債を一つひとつ、現在の価値に置き換えることで、会社の「土台」となる純資産の、より正確で公平な価値を算出しています。
P/L(損益計算書)から正常利益を算出する方法
年間の役員報酬や経費等を標準化すると… 正常なら利益はいくら?
営業権(のれん)を正しく評価するには、損益計算書(P/L)の利益をそのまま使うのではなく、「会社の本当の稼ぐ力(正常利益)」を見える化する必要があります。これは、「もし新しいオーナーが経営した場合、この会社は毎年どれくらいの利益を安定して生み出せるか?」という買い手の視点に立って、決算書の利益を修正する作業です。
例えば、事業とは関わりの薄い経費や、標準より高い役員報酬は、新しい体制では不要になるため利益に足し戻します。逆に、その年だけの不動産の売却で出たような特別な利益は、来年はないものとして差し引いて考えます。
このように、一時的な要因やオーナー社長ならではの項目を調整することで、会社の「本来の実力」が明らかになり、それを基に公正な営業権(のれん)の価値を算出することができます。
営業権(超過利益×想定持続期間)を算出する方法
超過利益を、「今後、何年続く」と買い手が見立てるか?
買い手は、投資の選択肢を持っています。例えば、企業買収ではなく金融商品への投資を選択することも可能で、10年国債等であれば低リスクで一定の利益を得られます。営業権のベースになる“超過利益“は「評価対象会社の正常収益」-「(対象会社の資産と同額投資した場合に)一般に期待される利益」で計算することができ、「その超過利益は何年くらい続くと見込めるか」を掛け合わせることで営業権を算出できます。
例えば、超過利益が年間1,000万円だとします。そして、その超過利益が安定的に3年続くと買い手が判断した場合、「のれん」の価値は【1,000万円 × 3年 = 3,000万円】と評価されます。ただし、来年得られる“かもしれない”1,000万円と、今、確実に手元にある1,000万円とでは、価値は異なります。将来の利益には不確実なリスクがあるため、その分を少し「割り引いて」現在の価値に換算することで、説得力のある価格帯が算出できます。
この金額が、会社の純資産(財産)に上乗せされる「目に見えない価値」の正体です。売り手側が築き上げてきた会社の強み(利益を生み出す力)が、このようにして具体的な価格へと変わります。
上場企業やファンドが用いるEV/EBITDA倍法
会社の投資利回りは何%? 利回り的発想のM&A評価方法です。
上場企業や投資ファンドといった買い手が、M&Aの際に最もよく使う物差しが「EV/EBITDA倍法」です。不動産投資の「利回り」に近い考え方、とイメージすると分かりやすいかもしれません。
まず、税金や借入金の返済などを考慮する前の「会社の本業の稼ぐ力(EBITDA)」を計算します。次に、その業界の上場企業が「稼ぐ力の何倍で評価されているか」という倍率(市場の相場)を調べます。
ただし、非上場企業の場合は、規模や株式の換金のしやすさの違いから、上場企業の倍率から一定の割引(ディスカウント)を行い、より現実に即した倍率で評価するのが一般的です。例えば、会社の稼ぐ力が年間2,000万円、業界の上場企業の相場が6倍であっても、割引後の4~5倍を用いて、【2,000万円 × 4~5倍 = 8,000万~1億円】といった形で、より現実的な価値を算出します。
このように業界の将来性や市場の評価を強く反映するのがこの手法の特徴で、上場企業や投資ファンドの財務担当者は、日常的にこのような観点で株価を評価していたりします。
簡易企業価値評価を進めるステップ
秘密厳守をお約束。決算書と簡単なヒアリングをもとに算出いたします。
Webページ上で数字を打ち込むだけで企業価値を手軽に評価できるサイトもありますが、「どのように計算されるのか」、買い手の考え方を理解することが大切だと私たちは考えています。なので、弊社が簡易企業価値評価をさせていただく際は、決算書をもとに事前にヒアリングさせていただくこともそうですが、評価書をもとにディスカッションすることを重視するようにしています。具体的なステップは、以下の4つです。
Step1:秘密保持契約の締結
何よりも先に、情報の安全を固くお約束します。外部に情報が漏れることは一切ございません。
Step2:決算資料のご提供とヒアリング
最新期から3期分の決算書等をご提供いただきつつ、決算書の特徴的な数値についていくつか簡単にヒアリングをさせていただきます。
Step3:弊社にて企業価値を分析・算定
お預かりした資料をもとに、貸借対照表や損益計算書をM&Aの物差しで修正・分析し、複数の手法を用いて会社の価値を多角的に計算します。
Step4:簡易株式評価書をもとにディスカッション
計算の材料や過程を踏まえた上で「現在の株式価値の価格帯」をお示しし、その数字を基に今後の経営やM&A、さらには社長ご自身の人生プランについて、一緒に作戦会議をさせていただきます。
「会社の価値を測ってみたいが、何だか大変そう…」 そうお考えの方も、ご安心ください。実務的なご負担は多くありません。企業価値評価にご興味のある方は、まずは気軽に問い合わせください。
M&Aの対価受け取り方法について
会社売却の対価は、一般的に「退職金」と「株価」に分けて受け取ります。
会社の売却価格(株式価値)を算出した後、つぎに計算するの「対価の受け取り方」です。対価の受け取り方で、社長の手元に残るお金(手取り額)は変わりますので、事前にシミュレーションする必要があります。
最も一般的で有効な方法は、算出した会社の価値を、まず社長への「役員退職金」として支払い、その残りを「株式の売却益」として受け取る、という2段階の考え方です。この2つは、税金の計算方法が全く異なります。まず、「株式の売却益」にかかる税金は、利益に対して一律約20%強になります。その一方で「役員退職金」は、社長の長年の功績に報いるための制度であり、勤続年数に応じた大きな控除が認められ、さらに税率も非常に優遇されています。
ただし、役員退職金の金額は、税務上損金算入が認められる金額等は限度があります。また、最終的な受け取り方法は、受企業様の資金調達額、譲渡企業様の資金繰り、オーナー様での手取額を総合的に勘案し、決定されます。M&A後のお金の計画も精査するには、税金を支払った後の手取り額が具体的にすることが重要だと考えています。
積立保険や会社資産の一部買い取りについて(B/Sの資産)
不動産や車、積立保険など、「資産の仕分け」は売却前に整理します。
「車を買い取ることは可能なのか?」「退職金代わりに積み立てた保険はどうなるのか?」
M&Aの際に、オーナー経営者様が気になる点はいくつかあると思います。これらはM&Aの前にきちんと整理すれば、社長個人の資産として手元に残すことが可能です。
たとえば、M&A後も社長が個人的に使いたい車や不動産などは、適正な価格で会社から社長ご自身が買い取ることができます。その際、事前に現金を用意する必要がない場合が多く、最終的に買い手から受け取るM&Aの売却代金から、その購入費用を差し引く(相殺する)という形で、スムーズに個人名義へ移すのが一般的です。
また、会社で加入している積立型の生命保険は、会社で解約して解約返戻金を受け取り、それを原資の一部として役員退職金として社長に支払うのが一般的な手法です。
このように、新しいオーナーの事業に直接関係のない資産を事前に整理しておくことは、買い手にとっても「事業内容が分かりやすい」というメリットがあり、交渉をスムーズに進める効果もあります。これも、後悔しないM&Aのための重要な準備の一つです。
役員借入金等の返済について(B/Sの負債)
会社に貸したお金は、M&A時にあわせて精算されることが多いです。
M&Aの準備をする際は、資産だけでなく負債をきちんと整理しておくことも非常に重要です。特に多くの中小企業で見られるのが、社長個人が会社に貸し付けている役員借入金です。
役員借入金に関しては、買い手との間で合意した株式の価格とは別に、役員借入金の金額をM&A対価の決済時にあわせて返済いただくことが多いです。返済額については譲渡益ではありませんので、課税対象にはなりません。
会社の負債に関していえば、帳簿にはっきりと載っていない簿外債務がないかを確認することも重要です。例えば、未払いの残業代や将来の退職金など、買い手からの信頼を得て、後のトラブルを防ぐためには事前の整理が不可欠です。
会社の負債の取扱いを明確かつクリーンな状態にしておくことは、安心してM&Aを進めるために重要です。細かいところも含めて、M&Aの提示条件を一緒に整理させていただきます。
事業を譲渡する場合の「対価の受け取り方法」について
原則、事業譲渡の対価は会社へ。個人事業主や持分なし医療法人は、個人所得で受け取ります。
会社全体ではなく、一部の事業だけを売却する「事業譲渡」。この方法は、会社丸ごとの売却(株式譲渡)とは、お金の流れと税金が全く異なりますので注意が必要です。
最も大きな違いは、売却代金の受け取り手が、社長個人ではなく「会社」になる点です。買い手から支払われたお金は、会社の銀行口座に直接入金されます。
そして会社は、その売却価格から、譲渡した事業の資産の簿価などを差し引いた利益(事業譲渡益)を計上します。この会社の利益に対しては、「法人税」がかかります(個人の株式譲渡益にかかる約20%の税金とは異なります)。
ただし、これには重要な例外があります。売り手が個人事業主の場合、事業と個人は一体ですので、売却代金は事業主ご本人が直接受け取ります。この場合、法人税ではなく、個人の事業所得などとして「所得税」の対象となります。
同様に、「持分なし医療法人」等が売り手となる場合では、理事長がご勇退される際の役員退職金という形で、事業譲渡の対価が個人に支払われるケースが一般的です。
このように事業譲渡の場合は、事業形態によってお金の受け取り手と税金が異なります。事前に確認し、手続き方法を整理しておくことが重要になります。
